ロンドン地下世界、「ファットバーグ」と闘う人びと

英ロンドン(London)中心部の下水道で、食用油の塊「ファットバーグ」を除去する水道大手テムズ・ウォーター(Thames Water)のビンス・ミニーさん(右)とティム・ヘンダーソンさん(左、2014年12月11日撮影)。(c)AFP/ADRIAN DENNIS〔AFPBB News

 毎年ある時期になると、進路に関する学生からの相談が増えます。

 私が籍を置いている東京大学は、善くも悪しくも就職に関してはいくつか特徴を持っており、一定の限られた有効性しかないものの経験則に基づいてアドバイスをしています。

 「これはあくまで一教員としての私の経験、私の考えに過ぎないから、ほかの先生や大人にも意見を聞いて、相対化しながら参考にしてね」と伝えているものすが、少しそんなお話をしてみたいと思います。

就職を考える若者に
なぜ元請けと下請けがあるのか?

 私は早くに父を失ったので、子供の頃、公共工事などで、元請け、2次請け、3次請け・・・といった下請けの制度がある理由がよく分からず、身近にもそういうことを教えてくれる大人もおらず、不思議でなりませんでした。

 33歳までフリーランスのミュージシャン、34歳から突然国立大学教官という公務員音楽教授職に生活が変化した私は、官費、公務に携わるようになって、初めてその理由を理解しました。

 国の会計制度は完全に納品が終わってから支払われるシステムになっているわけで、「公共事業立国」などと言われるように、日本のお金の大きな出元は国庫にほかなりません。

 そこから発注される大型プロジェクトは、一通りの納品が終わるまで肩代わりして実行する「大手」が受注し、一通りの納品が終わって初めて国から支払いが実行される。

 それまでの間を支えるのが元請けで、実際の仕事は2次請け以下に丸投げ、という構図は、国の会計(検査)のシステムに大きな背景がある。

 こんなことは学生時代、誰も教えてくれませんでした。

 もっとも私自身は、学生時代から音楽の仕事が回り始め、就職活動ということを一度も経験したことがなく、企業にも役所にも所属しようと思ったことのない、相当外れた人間ですので、意識の上ではマイノリティだと自覚しています。