原油市場で地政学リスクが効かなくなっている理由

原油価格に大きな影響を与える11月のOPEC総会

2017.10.27(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/51439
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 ドライブシーズンが終わり米国の原油需要の落ち込みが市場で意識され始める状況下で世界最大の原油輸入国となった中国経済の動向には今後も要注意である。

地政学リスクを「効かなくしている」要因は?

 今後の原油価格の見通しについては、足元の需給の引き締まり感に加え、中東地域の地政学リスクの高まりから強気の見方が強まっている(10月24日付ブルームバーグ)。

 9月末にクルド自治政府が実施した独立のための住民投票後、イラク北部地域の地政学リスクは高まっている。10月23日時点のイラク北部キルクーク地方とトルコのシーハンを結ぶパイプラインの原油輸送量は、元々の輸送量である約60万バレルから半減し、日量約29万バレルだった。同国南部でもこのところ原油の輸出量が減少している。

 また、米国のトランプ政権が長距離ミサイルの開発を理由にイランの核開発を制限する6カ国合意を破棄し、新たな制裁を課す方向で動いている。米下院議会は近々、対イラン制裁法案の採決を実施するとの情報がある(共和党議員の多くは直ちに離脱する必要はないとの意見が多いことから、核合意は維持されるとの見方が優勢である)。

 カタールと湾岸諸国との断交状態も一向に改善していない。

 ベネズエラでも国営石油会社(PDVSA)が経済の混乱による資材不足で、輸出する原油の品質に問題が生じている(10月22日付OILPRICE)。輸入国の受け入れ拒否に遭い2億ドルの原油売却収入を失っているとされており、10月末から11月にかけての債務償還(約20億ドル)が危ぶまれる事態となっている。

 ただし、「このような地政学リスクの高まりで原油価格はもっと上昇してもいいはずだが、そうなっていない」というのが筆者の実感である。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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