昨年末のある日の夕方、経団連の21世紀政策研究所のある委員会に出席するため、東京の大手町を歩いていました。ふと、何人もの人に追い抜かれていることに気がつきました。

 私が東京で仕事をしているときは、歩くのがすごく早いと言われていました。歩道を歩いていても、まず誰にも抜かれることはなかったので、とてもショックでした。歩くスピードが落ちているのです。

 2年前に福岡で省エネの仕事を始めたときは、「歩道をゆっくりと歩いている人がなんて多いのだろう」と思っていました。歩くスピードが合わなくてぶつかりそうになることが何度もありました。ところが今は、その福岡のスピードに慣れてしまっている自分に気がついたのです。

 この5年間、各地を講演などで旅をしていると、その地域によって歩行者の歩く速度に違いがあることを感じます。簡単に言うと、地方に行けば行くほど遅いのです。そして歩くスピードは仕事の速度とも連動している感覚があります。

 東京が一番、セカセカしているとも言えますが、これが良いとか悪いとは一概に言えません。ただ、私もビジネスの世界に復帰しましたので、歩くスピードは元に戻したいと強く思いました。

 国際競争の世界では、日本企業は意思決定が遅いと言われることが多いようですが、日本の中だけで見ると、福岡のような政令市でも東京とは大きな差があるようです。

総務省の了解を得ないと借金ができない

 さて、経団連の委員会では、大阪府知事のブレーンでもある上山信一・慶応義塾大学教授が中心となって、2年前から自治体の生産性の向上についての研究をしています(報告書はこちらをご覧ください)。

 その中で、研究テーマの1つとして「地方債」の研究も行われました。「地方債」というのは自治体の借金のことで、残高は全国の自治体の合計でおよそ200兆円ほどあります。

 地方債の残高の地方税収に対する割合ですが、地方税収の約5倍になります。国と同様に、自治体は借金まみれということが分かります。