北朝鮮の核実験場、「山疲労症候群」か 米分析サイト

北朝鮮が水爆実験を行ったと主張する同国北東部・豊渓里にある核実験場の実験前後の比較写真。左側は実験前、右側には実験後の土砂崩れとみられる痕がある(左は2017年9月1日、右は2017年9月4日入手、資料写真)。(c)AFP PHOTO/Image courtesy of Planet〔AFPBB News

 北朝鮮は2017年9月3日に6回目の核実験を実施した。同日、朝鮮中央テレビは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)に載せる核弾頭を目的とした水爆実験を実施・成功したと報じた。

 また、同日、朝鮮中央通信は「(水爆について)巨大な殺傷・破壊力を発揮するだけでなく、戦略的目的に応じて高空で爆発させ、広大な地域への超強力電磁パルス(ElectroMagnetic Pulse:EMP)攻撃まで加えることのできる多機能化された熱核弾頭だ」と強調した。

 このようなEMP攻撃も可能だとする北朝鮮のプロパガンダを受け、韓国の公共放送KBSは9月3日、EMP攻撃を受けた際は「自動車などの交通手段や金融機関や病院、通信施設など、すべての基幹施設が停止したり、誤作動を起こしたりして、事実上石器時代に戻る」という専門家の声を紹介している。

 他方、日本でも、ここ数年来EMP攻撃の脅威を強調する報道が多くなされている。

 例えば、「EMP攻撃で『文明』は崩壊…日本は何千万人も餓死に追い込まれる」産経・一筆他論(H29.3.5)や「『電磁パルス攻撃』の脅威 上空の核爆発で日本全土が機能不全に」産経・クローズアップ科学(H29.8.27)などである。

 これらの報道は、我が国のEMP攻撃対策の遅れに対する警鐘を鳴らす目的で脅威をことさら強調しているものと考えられる。

 しかし筆者は、これらの報道は誇張されており国民に過度の不安を与えるものであり、適切な対策が講じられていれば、EMP攻撃の影響を受け入れ可能な程度まで小さくできると考えている。

 EMPの発生原因、伝播および影響については様々な研究資料が既に公表されているので、本稿では、高高度における核爆発によって生じる電磁パルスによる攻撃、すなわち高高度電磁パルス(High altitude ElectroMagnetic Pulse:HEMP) 攻撃に対する保護対策について述べる。

 高高度核実験については、これまでに米国が14回(内訳1958年6回、1962年8回 最大規模1.4Mt、最大高度540km)、旧ソ連邦が7回(内訳1961年4回、1962年3回 最大規模1.2Mt、最大高度300km)の合計21回実施されている。

 しかるに、1963年に大気圏内、宇宙空間および水中での核実験を禁止した『部分的核実験禁止条約』が発効したこともあり、その後高高度核実験は実施されていない。

 当時の高高度核実験は、敵の核弾頭搭載ICBMによる攻撃への対処方策の探求を目的に実施されたが、EMPは瞬間的に放出されるものであったため、敵のICBM弾頭の誘導装置や制御装置を効果的に破壊することはできなかった。