実際に働き方改革を検討・実施している企業の方と話をすると、改革活動に取り組む職場では「時間外削減」「有休取得」など定量的な施策への取り組みは行っているが、そこにとどまっているというところをよく見受ける。

 一方、他の企業の取り組みを研究しながら様々な手法を試す企業もある。ただし、悩ましいのは、人事部が中心になって施策を展開しても、職場の活動がなかなかついてこない、やる気を引き出せない・・という点だろう。

 トップダウンやオーナーシップをもった推進力は必要だが、人事部が重点施策と評価項目(KPI)を決めて管理するだけの一方通行の働き方改革では、職場の受け身体質を助長し、やらされ感の増加、負担の偏在など“悪魔のサイクル”を回すことになりかねない。

 その結果、施策の形骸化や、成功体験(成長実感)が得られないといった状況を招く恐れもある。

働き方改革を「自分事化」するための3つの働きかけ

 働き方についての見直しの気運が高まったことで、特に勤務時間という観点から、就業規則の方針展開や職場のルール変更などに取り組む企業が増えるようになった。しかし「どのような働き方が“うちの会社らしい”のだろうか」と、会社として理想的な働き方を考える機会はまだ不足しているのが現状ではないか。

 今、必要なのは、「自分(たち)にとって働きがいのある働き方」を考えることであろう。

 正社員、パート、派遣社員、
 乳幼児がいたり、介護に携わる時短勤務社員、
 障がいを持ちながらも会社に貢献したいと考えている社員、
 今後の処遇が気になるシニア社員・・・

 こういった多様な人材の力を引き出して改善・改革を進めていくには、個々の人たちにとって“自分事化”を促すプロセスが欠かせない。