(英エコノミスト誌 2017年10月7日号)

日欧EPA、大枠合意も容易ならぬ前途

ベルギー・ブリュッセルの欧州理事会で共同会見に臨んだ(左から)同理事会のドナルド・トゥスク常任議長(EU大統領)、安倍晋三首相、欧州委員会のジャンクロード・ユンケル委員長(2017年7月6日撮影)。(c)AFP/Francois Walschaerts〔AFPBB News

EUと日本は接近しているものの、最も重要なのはやはり米国との関係だ。

 日本を代表する企業ロビー団体である経団連の清水章氏には、ブレグジットについて持論がある。それによると、1回目のブレグジットは1534年、当時の国王ヘンリー8世がカトリック教会と袂を分かったことで実行された。この関係断絶を機に自由思想によるイノベーションの時代が始まり、その250年後にはジェームズ・ワットによる蒸気機関の発明と産業革命の到来をもって絶頂期を迎えたという。

 清水氏はさらに、これから始まるブレグジットの続編は、運が良ければ英国の経済モデルの大改革がもう少し迅速に進むよう促してくれるだろう、とほくそ笑みながら語ってくれた。

 ただ、その清水氏でさえ、英国は欧州連合(EU)離脱後に「5、6年」の痛みを伴う時期に直面する可能性があり、変化にうまく対応できなければその時期はもっと長くなるかもしれないと考えている。日本から見れば、英国は対EU投資の半分近くを占める投資先だ。このため話し合いがもつれた末の離婚となれば、日本企業が失うものは他国よりも大きい。

 例えば、英国にある日本企業の自動車工場は、欧州に広がる複雑なサプライチェーン(供給網)に依存している。ロンドンに拠点を置いている邦銀は、「単一パスポート制度」を利用して欧州各地で事業を展開している。もし英国が単一市場を離れれば、拠点を英仏海峡の反対側に移したり欧州から完全撤退したりする日本企業も出てくるかもしれない。

 分別を働かせて外交関係を円滑に進めることが多い国にしては珍しいことに、日本の政府機関や業界団体は、ブレグジットの交渉が失速したと感じる度に不安そうな声明を発表してきた。しかも、その心配の度合いは少しずつ強まっている。合言葉は予測可能性だ。