ラーメン・居酒屋・バー「KU」の店内。ガラスで覆われた店内は、和食店とは思えない明るさで、酒類を飲むのが憚られる。これも、現代ロシア人の求める健康志向にマッチした店舗デザインであり、ノボシビルスクではすでに集客効果は実験済みと経営者のイワノフ氏は語っていた。

 ロシア経済が爆発的な右肩上がりを示した時期ははるか昔に過ぎ去ってしまったが、現在においてもインフレ率、失業率、各種商品の価格上昇率など、経済統計数字には国家コントロールが効いていて、ロシア国民の生活にはそれなりの余裕が感じられる。

 もちろん、ロシア経済の中心地であるモスクワと地方都市、特にシベリアの諸都市では経済状況は大きく異なる。

 とはいえ、筆者自身の印象として、日本政府のウラジーミル・プーチン大統領への協賛策で日本企業が80社も参加した7月のINNOPROM展で訪問したエカテリンブルク、極東案件で9月に出張したウラジオストクなどは、大変な好況を示していて、いろいろな分野に新規民間企業の参入がみられた。

 特に諸都市で驚くような発展を遂げているのは高級飲食業であり、今やロシアのどの100万人都市を訪問しても、西欧諸国に負けないレストランに出会うことができる。

 本稿では、モスクワの飲食業界を例に取り、和風業態における新規参入2店舗の事業活動をご紹介しようと思う。

 この時期に新しい和風業態が誕生するということは、日露関係が安定的に推移しているという証拠でもあり、安倍晋三政権の作り出した大きな対露友好の流れの中で誕生した、日露の結びつきの1つの具体例と言えよう。

ラーメン・居酒屋「KU」

 シベリアの入り口、ノボシビルスクで幅広くレストラン業を営むデニス・イワノフ、白浜千鶴子ご夫妻。

 イワノフ氏はシベリアのレストラン王と言われ、各種業態にわたるレストランを30店舗、さらに空港でのVIPラウンジ、ケータリング、料理学校と飲食業のあらゆる方向に進出している。

 筆者も何度かノボシビルスクのお店を訪れ、「Beerman」ではインハウスブルワリーで作られたビールを味わい、「SALT」レストランでは本格的なフランス料理に舌鼓を打った。

 どの料理も完成した味つけで、ここがノボシビルスクとは信じられなかった(失礼!)