文化レベルが高い割に、物価が安い東欧諸国は、この点を利用している。ハンガリーの医学部定員は約2万人だが、このうち5000人程度を英語で教育している。学生の出身地で多いのは、ドイツ・イスラエル・北欧だが、日本人の学生も多い。現在、約400人が在籍しており、2016年度は78人が入学した。

 彼らが東欧を選ぶ理由は、比較的入学しやすく、かつ学費が安いことだという。図6は、国内、米国、東欧の医学部で、入学から卒業までに必要な学費を示している。日本の私大医学部や米国の有名医学部と違い、東欧の医学部なら、日本のサラリーマン家庭でも十分に負担出来る金額であることがお分かりいただけるだろう。

図6:医学部の学費の国際比較

「学校歴」ではなく「学歴」

 幸い、物価も安い。石川君は「年間の生活費は120万円もあれば十分です」という。

 今後、この傾向は加速するだろう。なぜなら、東欧諸国は医学教育を外貨獲得の手段と考えているからだ。ハンガリーには4つの医学部があるが、留学生が納める学費は1億ドルを超える。

 世界の高等教育は急速にグローバル化しつつある。低コストで、ハイレベルの教育が受けられる大学には世界中から学生が集まる。医師のような業務独占資格の場合は、なおさらだ。

 日本人は東京大学やハーバード大学卒業などの「学校歴」が好きだが、世界では「学歴」がものをいう。医師免許、MBA、博士号などだ。資格をとれば、あとは実力勝負である。

 では、日本人が東欧での医学部進学を考えた場合の問題はなんだろう。それは、入学は容易だが進学が難しいことだ。

 この点については、月刊誌『選択』2017年3月号に「東欧への『医学部留学』がブーム」という論文が掲載されている。コンパクトにまとまっており、ご興味のある方はお読み頂きたい。

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