地方大学は「地域密着」

 読者の中には、「医師を目指すなら、首都圏にこだわらず、全国どこの医学部に行ってもいいだろう」とお考えの方もいらっしゃるだろう。

 確かに、その通りだ。ところが、医学部に限らず、大学の多くは地元出身者で締められる。大学は、どこも「地域密着」なのだ。東大の関東出身者、京都大学や大阪大学の近畿地方出身者は、例年6割弱だ。九州大学や名古屋大学は7割以上を地元出身者が占める。

 余談だが、もっとも地元出身者が少ない、つまり全国から学生があつまるのは北海道大学と東北大学だ。いずれも地元出身者は4割程度である。その分布を示す。

図4:北大の入学者の分布(2014年度入学者)
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図5:東北大の入学者の分布(2014年度入学者)
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 両者の分布は対照的だ。東北大は隣接する関東地方からの入学者が多く、地元出身率が低下する。北大は全国から集まっている。富山県など日本海側が多いのは、北前船や入植の歴史の影響だろう。かくの如く、大学入学者は地域の歴史を反映する。

 話を戻そう。首都圏の高校生が医師になりたいと希望した場合、多くは首都圏か東北地方の国公立の医学部を目指す。それで駄目な場合は諦めるか、西日本の医学部に進学する。ただ、偏差値は高く、合格は至難の業だ。

 どうしても医者になりたい若者の中には、海外に飛び出そうとする者も出てくる。これが冒頭にご紹介した石川君だ。

人気高まる「東欧」

 海外の医学部と言えば、ハーバード大学など米国の医学部を思い浮かべる方が多いだろう。

 ところが、最近注目を集めているのは、東欧の医学部だ。ハンガリー、スロバキア、チェコ、ブルガリアの医学部には、すでに約370人の日本人が在籍している。石川君も、その中の1人だ。

 EUでは、EU内のどの医学部を卒業しても、医師資格試験に合格すれば、EU内で通用する共通免許を取得することができる。

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