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医療ミス、米国で死因3位 研究

仏西部アンジェにある教育病院の集中治療室(2013年10月24日撮影、資料写真)。(c)AFP/JEAN-SEBASTIEN EVRARD〔AFPBB News

(文:上 昌広)

 石川甚仁君という学生がいる。ハンガリーのセンメルワイス大学に通う36歳だ。日本の大学を卒業。社会人経験を積んだ後、医学の道を志した。

 なぜ、ハンガリーなのか。石川君は「私にとって最適な医学部だったから」と言う。どういう意味だろうか。本稿では、その背景をご紹介したい。

図1:国公立大学および東大理1の偏差値(2016年度入試、河合塾のデータから)

急速に「難化」している地方医学部

 いまさら言うまでもないが、医学部進学は狭き門だ。

 我が国には82の医学部(大学校である防衛医大を含む)があり、そのうち31は私大医学部だ。6年間の学費は、もっとも安い国際医療福祉大学(千葉県成田市)で1850万円。もっとも高い川崎医科大学(岡山県倉敷市)は4550万円もする。開業医など一部の裕福な家庭を除き、子弟を進学させることはかなり困難だろう。

 対して、我が国に50校存在する国公立大学の6年間の学費は約350万円。私立大学と比較すると格安だが、こちらは学力の面で入学するのが難しい。冒頭の図1は2016年の医学部の偏差値を比較したものだ。いまや地方大学の医学部の偏差値は東大理科1類と変わらない。

 近年、医学部は急速に「難化」している。図2は、1986年と2016年の国公立大医学部の偏差値の変化を示している。比較のため、東大理1も示した。山梨大学、弘前大学などの地方大学の医学部が急速に難化していることがお分かり頂けるだろう。

図2:国公立医学部「偏差値」30年変遷

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