上に挙げた事業撤退の例に見られるように、ASEAN主要国での成長が困難になる中で、それ以外の国々が注目されることも多い。しかしながら、期待した通りの展開にはなりにくい。例えば、ミャンマーは「アジア最後のフロンティア」と呼ばれ、2011~2012年頃には当地への進出を検討・実現する企業が増加した。しかしながら、市場開放・民政移行後も数々の課題(脆弱なインフラ、西部地域でのロヒンギャ問題など)が改善されておらず、当初の期待通りには市場としての魅力は高まっていない。ASEAN諸国以外でも、中国市場やインド市場で苦戦する日本企業も多い。

既進出国ビジネスを再成長させる

 現状維持すら困難になりつつある海外ビジネスの倦怠期を乗り越えるためには、むやみに拡大を図るのではなく、既進出国ビジネスをしっかりと再成長させることが必要である。

 進出してから一定の年数が経過することで、当地において勝てる、あるいは生き残れるブランドとそれ以外の見極めはできているはずだ。勝てる/生き残れる理由を改めて整理することで、既進出国におけるブランドをさらに強化していくマネジメントが重要となる。

 加えて、EC市場への取り組みを強化することも選択肢となる。“AEC Blueprint 2025”では、ICTを活用した商取引(EC)の推進を提示して★いる。販路の拡大が困難だったB2Cビジネスにおいても、EC市場を活用することで既進出国ビジネスを強化することが可能になる。

 EC市場の動きは速く、地場系EC事業者に加えて、域外EC事業者もASEAN域内市場に次々に参入している。2017年8月には、中国アリババグループが、インドネシアの大手EC事業者トコペディアへの出資を発表した。また、中国EC事業者であるジンドンがタイ流通系財閥セントラルグループとの共同会社設立を検討していることも報道された。アマゾンもシンガポールへの進出を手始めに、ASEAN市場への本格参入を検討している。

小さな「新大陸」への取組みを進める

 ASEAN諸国の中でも人口が少なく注目を集めることの少ないラオスやカンボジアで市場拡大を図ることも考えられる。

 ラオスとカンボジアはともにタイの隣接国であり、タイとの結びつきが強い。タイには多くの日本企業が進出しているが、タイ国内経済のみに依存せず、“タイ+1”として近隣国(カンボジアやラオスなど)を開拓することも倦怠期の解消に役立つ。

 一方、ASEAN域外への取り組みも考える必要がある。特に、これまで見過ごされてきた国への進出も検討すべきであろう。ここでは、インド亜大陸の南に位置するスリランカを取り上げる。

スリランカの主要経済指標(2016年)
(出所)World Bank/IMFよりNRI作成