「単一の市場と生産基地」が実現し、大きな消費市場が生まれることで、消費財メーカーの多くが事業拡大のチャンスを得られることを期待してきた。

 一方で、“経済共同体”の名称を持っているものの、EU市場が推し進めてきた通貨統合は、ASEAN市場においては予定されていない。そのため、市場としての一体性は限定的にならざるを得ない。ASEAN市場においては、個別の国々での取り組みが優先される状況が当面続くと考えられる。

競争激化でASEAN消費財ビジネスに“倦怠感”

 各国が個別に取り組みを進めてきた中で、日本企業の一部は、ASEANでの消費財ビジネスに対する「倦怠感」を感じているようである。売上が伸び悩む、売上は増えていてもシェアは増えない、といった悩みを感じる企業も多い。

 その背景には、現地人材の育成不足や、現地が求める仕様へのカスタマイズが十分でない、といった内部的な要因に加えて、競合との争いの厳しさが増していることなどがある。

 その国の“ポテンシャル”を評価する軸として、これまでは人口規模、所得水準(1人あたりGDP)などを基本として、物流インフラなどの整備状況等の指標が多く用いられてきた。その結果、人口規模が随一であるインドネシアやフィリピン、ベトナム、タイといった国に、日本以外からも多くの企業が集まり、競争関係が激しくなっている。

ASEAN加盟国の主要経済指標(2015年・2016年)
(出所)ASEAN SecretariatよりNRI作成

 その結果、日系企業が多く進出してきたタイ市場においても、事業撤退を決定する大手日系企業が現れている。

 例えば、雪印メグミルクは2015年にタイの粉ミルク事業撤退を公表した。決算説明会での質疑応答では、2011年に発生したタイ大洪水により生産設備が被災したことに加え、タイでの欧米粉ミルクメーカーとの競争が激化していることが撤退の理由として挙げられた。また、DHCは2003年にタイへ進出したものの、2012年に事業撤退を決定した(2015年に再参入)。アメリカ大手化粧品直販企業であるエイボンも、タイ、ベトナム市場から撤退している。