ハードワーク一辺倒の時代は終わった

アクセンチュア 人事部 マネジャー 岩下 千草氏  現場でコンサルタントとしての経験を積んだ後、2008年に人事部に異動。インクルージョン&ダイバーシティ推進や人材育成の担当を経て、全社の組織風土改革プロジェクトProject PRIDEに従事する

 日本に近いマーケットタイプのドイツの労働環境を見てみよう。OECDの調査によると、ドイツでは年間の労働時間がおよそ1400時間。労働時間が厳しく管理され、有給休暇も取らなければならない。(※1・2)

 一方、日本は1700時間を超えている。日本の方が、年間300時間以上余計に働いている計算になるのだ。

 「これだけ差が生じるのは、何かがおかしい。日本人のメンタリティや働き方に対する考え方に一石を投じようなんて大それたことは考えていませんが、働き方もグローバル化していかないと、海外の人たちと一緒にプロジェクトをやるときに足並みをそろえられません。マーケットをグローバル化していくためにも、国内だけでなく地球規模で働き方を考えていく必要があると思っています。…まだまだ道半ばではありますが」(武井氏)

 プロジェクト開始から2年が経ち、平均残業時間で1人1日1時間まで減らすことができたという。月間45時間以上の残業原則ゼロに向けて、残業が発生するとわかった時点で各部署で仕事を分散して、45時間以上にならないよう対策を図る。それでも部署内での対策が難しければ、経営会議で議論して、全社をあげて対策を考えるというから、その本気度がうかがえるだろう。

 コンサルタントならではの働き方として、プロジェクトベースで勤務地も上司も同僚も変わるという特徴が挙げられる。そうなると、どうしても人よりもタスクに重きが置かれ、「そのタスクを消化するのがあなたのロールなんだから、しのごの言わずやりなさい」というスタンスになりがちだ。しかし、そうではなくコミュニケーション・コラボレーション・互いの立場や気持ちを理解し合うことが、最終的には生産性の向上につながっていくのだ、と武井氏は話す。

 「”Being the most truly human organization"を目指し、人としてのワーク・ライフ・バランスを大切にすることで、会社に対するエンゲージメントを高めるとともに、家族や地域社会との関係性を良好なものにしていこうとしています。

 どこでもそうだと思いますが、仕事はできる人のところに集中してしまう。できる人は期待に応えようと、がんばり過ぎてしまう。それが続くとバーンアウトしてしまって、サスティナブルではないですよね。

 アクセンチュアのひとりひとりが最高にパフォーマンスを発揮できる状態を考えていかなければ、せっかくのリソースをフルに活用できないじゃないですか。今後、世界も少子高齢化に向かい始める中で、生産性を高めていくためにはハードワーク一辺倒では続かないのではないか、というのが私たちの考え方です」(武井氏)

(※参照1)年間労働時間について:OECD世界の労働時間 2016年国別ランキング
・ドイツ:1363時間
・日本:1713時間
・ドイツと日本の労働時間の差:350時間

(※参照2)ドイツでの労働時間、および有給休暇取得について:
出所:独立行政法人労働政策研究・研修機構