(英エコノミスト誌 2017年9月16日号)

ハリケーン「イルマ」、260万人被災の恐れ 赤十字

ハリケーン「イルマ」が通過したカリブ海の仏領サンマルタン(オランダ名:シントマールテン)島(2017年9月7日撮影)。(c)AFP/Lionel CHAMOISEAU〔AFPBB News

カリブ海地域は単に再建するだけでなく、気候変動に適応しなければならない。

 ハリケーン「イルマ」は9月上旬、東カリブ海の島々の上空を3日間かけて通っていった。うなりをあげて進むその様は、さながら風と雨でできたブルドーザーのようだった。南国のそよ風は時速300キロ(秒速83メートル)の暴風に変わり、赤十字のマールテン・ファン・アールスト氏の言を借りれば「屋根のトタン板は空飛ぶカミソリの刃」になった。普段は穏やかな海に巨大な波が無数に立ち上がり、町はごうごうと流れる雨水に飲み込まれた。

 嵐が過ぎ去って太陽が雲間から顔をのぞかせても、悪夢は終わらなかった。一部の島では食料と水が不足し、略奪が始まった。生き延びた住民は、カリブ海諸国での犠牲者が最新の集計で50人に達しなかったことに感謝したものの、イルマが猛威を振るった結果、キューバをはじめとする13の国・地域で数万人が住む家を失った。集落が丸ごと吹き飛ばされたところもあった。

 これらの島々に住む人のほとんどは、できるだけ早く日常の生活に戻りたいと切望している。多くの住民にとって、それはホテルやバー、レストラン、サーフィン教室など、この地域の経済にとって最も重要な施設を再開することを意味する。フランス領のサン・バルテルミー島の当局は、12月に始まる観光シーズンのピークに何とか間に合わせたいと述べている。

 しかし、日常の生活は、島の人々が望むような早い時期には戻ってこないだろう。2004年にハリケーン「アイバン」に襲われたグレナダでは、襲来後最初の観光シーズンに、観光客の出足が襲来前の10%に落ち込んだ。国内総生産(GDP)も、その後回復したとはいえ24%減少した。

 カリブ海諸国の復興に要する費用は莫大な額になるだろう。フランス国営の保険会社の推計によれば、サン・バルテルミー島と、サン・マルタン島のフランス側(人口7万5000人のこの島は、フランス領とオランダ領に二分されている)のインフラ修復には12億ユーロ(14億ドル)かかるという。サン・マルタン島の建築物は、3分の2以上が破損したり完全に破壊されたりした。バーブーダ島では、ほぼすべての建物が壊された。