(英エコノミスト誌 2017年9月9日号)

「顔パス」時代の到来 顔認証システムの導入で

中国・蘭州駅の顔認証改札(2017年5月2日撮影、資料写真)。(c)CNS/楊エン敏〔AFPBB News

顔認識の時代の暮らし

 人の顔というものは、実によくできている。驚くほど多様で、お互いを認識するのに役に立つ。複雑な社会を構成するには欠かせない。また、意図せざる赤面であれ本心を隠した作り笑いであれ、表情を介して感情を伝えることができる機能も重要だ。実際、人は起きている時間の大半を、他人の顔をうかがいながら過ごしている。

 オフィスで、法廷で、さらにはバーや寝室で、自分は関心を持たれているのか、それとも敵意を持たれているのか、信用されているのか、あるいはだまされているのか、相手の顔から読み取ろうとする。逆に、自分の感情を読み取られないように表情を偽ることにも、かなりの時間を割いている。

 顔からいろいろな情報を読み取る人間の能力に、テクノロジーが急速に追いつきつつある。米国では、顔認識の技術が、教会で信者の出欠を取るのに使われている。英国では、小売店の店内で、万引の前科がある客を見つけるのに用いられている。今年、英国ウェールズの警察はサッカーの試合会場の外で容疑者を逮捕するのに活用した。

 中国では、ライドヘイリングサービス(自動車による送迎サービス)のドライバーの身元確認、娯楽施設への入退場管理、代金の支払いなどでの「顔パス」に使われている。アップルの新しい「iPhone」では、画面ロックの解除に使われる見通しだ。

 人間に備わっているスキルと比較すると、こうした利用方法は漸進的だと思われるかもしれない。飛行機やインターネットといった飛躍的な進歩は、人の能力を目に見える形で高めているが、顔認識の技術は、顔をデータ化しているだけに見えるということだ。

 顔は一人ひとり違うものだが、公にされてもいるため、一見すると、この技術はプライバシーを侵害してはいないと思われるかもしれない。

 しかし、顔の画像データを安価に素早く、かつ大量に記録、保存、分析できる技術はいずれ、プライバシーや公正さ、そして信頼といった概念に根本的な変化をもたらすことになりそうだ。