これは国家のプライドを超越する問題だ。他者にも理解できる戦略を採用すれば、貿易交渉や防衛・安全保障に関する連携協定での合意はもっと容易になるだろう。ブレグジットは今のところ、英国民6600万人の52%には直感的なアピール(訴求)ができているが、外国の人々にはあまり受け入れられていない。

 訴求力のあるブランドに価値があることは、ある学術的な実験でも分かっている。この実験では67人の被験者が、目隠しをしたうえでコカ・コーラとペプシ・コーラを飲み比べたり、目隠しをせずそれぞれのラベルが見える状態で飲み比べたりした。さらに、飲み比べをしながら被験者の脳をスキャンするということも行った。

 その結果、自分が飲んでいるブランドが分かることは「表に出る行動選好や、計測される脳の反応に劇的な効果をもたらす」ことが明らかになった。要するに、あなたが飲んでいるのはコカ・コーラですよと教えられると、楽しいという気持ちが強まるだけでなく、気分に基づく行動に影響を及ぼしている脳の一部分も活性化する、というのだ。

 コカ・コーラは1886年からずっと、独自性を確立し、赤い服を着た陽気なサンタクロースと結びつけて考えてもらえるようする時間があった。たが、ブレグジットという概念は、そうした試練をまだ経ていない。その点では、EUが相対的に有利だ。世界金融危機ではユーロ圏の構造的な欠陥についていろいろなことが明らかになったものの、EUという概念は、1957年のローマ条約締結以降の富の増加や大陸の平和と結びつけて考えてもらえるからだ。

 英国のテリーザ・メイ首相は、「ブレグジットはブレグジットだ」というキャッチフレーズを頼りにしている。しかし、こんな意味不明なコピーにこだわっていたら、広告賞は決して受賞できないだろう。