そのことが典型的に現れていたのは、今後1年間で最も心配なことは何かと参加者に尋ねるアンケートだった。そこには、朝鮮半島での核戦争の可能性と並んで、「ナショナリズムと保護主義、例えばトランプ、ブレグジット」という選択肢が記されていた。

 残留派から離脱派に転じた著述家で学者のニーアル・ファーガソン氏は、保護主義はブレグジットとは「絶対に関係ない」とかみついたが、その指摘に納得した出席者はほとんどいなかったようだ。

 ドナルド・トランプ氏は分かりやすさの達人であり、大統領が何を考えているかは容易に理解できる。同じことは、オランダの極右政党「自由党」を率いるヘルト・ウィルダース氏にも言える。このフォーラムでは、EUの連邦化は「私にとっては最悪の悪夢」だと発言し、「愛国心に対する敵意」を批判していた。

 では、ブレグジットとはいったい何なのか。もし「内向きになること」でないとしたら、果たして何を意味する概念なのだろうか。

 会場に漂うムードを巧みに表現してみせたのは、イタリアのマリオ・モンティ元首相だった。モンティ氏は、ヨーロッパ人はアングロサクソンの世界の「プラグマティズム、合理性、そして研究成果を政策に結びつける洗練された手腕」を称えながら大きくなった、そこから学ぶことによって「大人になった」と指摘したうえで、米国と英国が退行しているように見える今、EU諸国は「この世界において以前よりも孤独を感じている」と述べたのだ。

 今日の英国では、そのような心情を吐露すれば熱烈なEU離脱派から傲慢な「リモーナー*1」だとそしられ、愛国心を持ってブレグジットを支持せよと言われることが多い。ただ、それに従うよう強制されることはない。これと同様な高飛車な態度をほかの国々に取ることは、自分が作ったおしゃれな製品をどうして理解できないのか、どこが気に入らないのか、なぜ買わないのかと顧客を責めるようなものだ。

*1=Remoaner。EU残留派のRemainerと嘆くことを意味するmoanを組み合わせた造語。