──女性の管理職に対するイメージは、どうですか?

大洲 「管理職は大変」「管理職になると自分の時間が取られる」といったネガティブなイメージは強いですよね。周りにいる管理職の人たちがどう見ても大変そうだったり、長時間労働をしているからだと思いますが。

井上 日本社会は、高度経済成長を遂げた男性社会を、いまだに引きずっていますから。そういう人たちを見て、女性社員は「あぁはなりたくない」と思っていると思います。実は私も管理職になった後に、広島に住む親の介護をすることになったのですが、それまでお客様先に張り付いていたので、会社を辞めるか休職するか選択しなければと悩んでいました。

 そのとき上司に相談したら、「別にあなたがずっとそこに張り付かなければならないという契約にはなっていないし、今までのワークスタイルに固執する必要はないのではないか。誰かに任せたとしても、あなたの築き上げたキャリアを不意にすることはないだろう」と、お客様の説得にも一緒に当たってくれたんです。あのとき上司が助けてくれなかったら、キャリアを諦める道を選んでいたでしょうね。

大洲 思い込みで閉じてしまうというのは、日本の女性に多い傾向ですよね。自分で自分を縛っているというか。主張もしないし、自己完結しようとする。相手に尋ねることさえせずに、静かに去っていく人が多いのではないでしょうか。

井上 ほんとにそうです。私も勝手に自分でなんとかしなきゃと思い込んでいましたが、自分の部下を育成して、私の代わりにサポートしてもらう体制を組んだことで、私は週に1度か2度お客様先に顔を出すスタイルに切り替えられましたし、部下の成長にもつながりました。ブレイクスルーはどこにでもあると思うので、Work Smarter!の活動を通じて、そういったところももっと発信していけたらと。

7月24日にイトーキ東京イノベーションセンター SYNQAにて開催されたWork Smarter!の事業説明会にて

──では最後に、今後のWork Smarter!の取り組みについて、教えてください。

井上 まず女性向けには、チームリーダー向けの時短術や、管理職をひとつのキャリアオプションとして考えてもらえるような管理職意識付け講座(仮称)と、管理職で実際にチームを率いるための実践的なマネジメント能力を要請する講座を11月くらいにスタートしたいと考えています。

大洲 企業向けには、「管理職になりたいか」「どんなタイミングで管理職になり、その際どんな悩みを抱えていたのか」「管理職になるにあたり、企業からどんなサポートがあったか」といった質問をWebアンケートで集めているので、その調査結果をWork Smarter!に賛同するチーム企業に開示した上で、交流会のような形で「うまくいっているところは何が効いているのか」などをざっくばらんに話し合いながら、今後どんな施策を打てば響きやすいのかを明らかにしていく予定です。

井上 高付加価値を生む働き方へとシフトし、日本の長時間労働を是正するためには、効率的に働こうとする女性や制約を持った人たちの視点が欠かせないと思うので、Work Smarter!を通じて日本の目指す働き方改革に寄与していきたいですね。