「ラウンドのときには一応、“いかがですか”と聞かれますが、点滴の落ち具合のチェックに来ているだけのように思えたのも残念でした。私のおなかに手を当てて看てくれた看護師さんは一人だけでした。この人は看護ができていると思いましたね」。

 また、一部の看護師の話し方が耳障りでした。ある看護師に「何かお仕事をされているんですかぁ」「あ、医者ですか、その歳でまだお仕事されているんですか」などと言われて驚いたともいいます。

「病院では“患者”という立場で括られてしまいますが、それぞれに社会的背景を持っています。病棟では入院時に書類を書かせてその患者さんの職業などの情報を入手しているのですから、もっと個々の患者さんの背景を踏まえた上で応対してほしいと思いました」。

 唐澤さんがこの術前化学療法の治療や副作用での経験から学んだのは、痛みや違和感、具合の悪さは自分にしかわからない、だから、患者さんは自覚症状を必ず早めに詳しく医療者に伝えるべきだということ、また、医療者は患者さんの言葉にもっと耳を傾け、対応を真剣に考えるべきだということです。

「そうでないと患者さんの具合がさらに悪くなったり、医療者不信になったりしていきます。医療者はもっと患者さんに学ばなければいけないですね」。

 唐澤さんは5日間入院して腹痛が軽快し、少し食べられるようになって、退院しました。薬疹は少し残っていましたが、ステロイドなどの支持療法の薬は少しずつ減らし、飲まないようになりました。

(続く)

小島あゆみ

慶應義塾大学卒業後、日経ホーム出版社(現・日経BP)で女性誌の編集に携わり、フリーランスに。雑誌やウェブ、書籍で、医療・健康分野や科学関連の記事の編集・執筆を行う。2014年、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修士課程修了。NPO法人からだとこころの発見塾 理事。

*本稿は、がん患者さん・ご家族、がん医療に関わる全ての方に対して、がんの臨床試験(治験)・臨床研究を含む有益ながん医療情報を一般の方々にもわかるような形で発信する情報サイト「オンコロ」の提供記事です。