(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年8月22日付)

メッセージアプリで児童ポルノ共有、欧州と中南米で39人逮捕

メッセージアプリ「ワッツアップ」のロゴ。仏パリにて(2016年12月28日撮影)。(c)AFP/Lionel BONAVENTURE〔AFPBB News

 旧習を打破するテクノロジスト、モクシー・マーリンスパイク氏は昨年、ヒラリー・クリントン氏が自分の暗号化メッセージングアプリの顧客になったとき、シリコンバレーのトレードマークとなっている理想主義でこれを歓迎した。「我々はある意味で、本当に未来を勝ち取ったと思う」――。

 だが、ワッツアップやその他の対話アプリの基盤も支えている暗号技術「シグナル」は、大成功を収めると同時に大きな物議をかもしている。現在、そうしたアプリを利用している数十億人のユーザーは、秘密に守られて活動している。我々は今、米国西海岸のリベラルなビジョンの裏側がどれほど危険か知り始めたばかりだ。

 最近では、テロ攻撃が起きるたびに、犯人が連絡を取り合った方法が捜査の重要なアプローチとなる。過去2~3年、パリやロンドン、ストックホルムでのテロ攻撃では、警察がワッツアップ経由の暗号化メッセージが果たした役割を浮き彫りにした。米連邦捜査局(FBI)のジェームズ・コミー長官(当時)は5月に米上院で、そうしたサービスが与える秘密性に言及し、「暗い影が降り続けている」と語った。

 暗号化メッセージは盗聴や召喚状を無価値にする。メッセージは個人の端末だけに残っており、対話を可能にしている企業がアクセスすることはできないからだ。

 英国と米国の当局は重大犯罪の捜査で、暗号化されたデータへの「裏口」アクセスを提供するようハイテク企業に訴えてきたが、往々にして無駄に終わっている。最も有名な例が、米サンバーナディーノでの銃乱射事件後にFBIが米アップルに捜査協力を要請した一件だ。

 議論の大部分はこれまで、テロに集中してきた。ところが今、FBIが今週浮き彫りにしたように、暗号化メッセージが金融犯罪を助長する可能性がはっきり見えてきた。FBIの幹部エージェントは本紙フィナンシャル・タイムズ(FT)に、暗号化は「詐欺、マネーロンダリング(資金洗浄)、インサイダー取引」事件に取り組むうえで次第に大きな問題となっていると語った。