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 サッポロホールディングス株式会社と株式会社 野村総合研究所(以下「NRI」)が共同で、AI技術を用いてグループ全体の業務効率化を推進するための実証実験を行ったことを2017年7月6日に発表した。
 実験は、サッポログループ従業員を対象に、社内問い合わせへの対応業務にAIを導入するというもの。結果として、実験期間中に発生した問い合わせ件数の45%が、人手をかけずAIだけで回答可能であることが確認された。

長期経営ビジョン「SPEED150」のもと、AIを活用した業務効率化・生産性向上を加速

 サッポログループは、約6,000人の従業員を抱える巨大企業。人事・総務・経理・情報システムなどの機能は、グループ本社機能分担会社であるサッポログループマネジメント株式会社が一手に担っており、問い合わせはそこに集まってくる。これまでは、すべての案件にメールや電話などの「人力」が対応していたが、「複雑な問い合わせに対応する業務の負荷が高い」、「回答待ちの時間が発生し、不満が解決されにくい」「申請手続きが煩雑でわかりにくい」など、対応する側と利用する側双方から課題の声が挙がっていた。

 今回の実験では、問い合わせの入口にNRIの「TRAINA/トレイナ」と呼ばれるAIソリューションを導入。利用者の質問内容にAIがチャット形式で回答し、最適な情報に導いていく流れを作った。さらにAIは、問題を解決するために必要となる社内用の申請画面へのリンクを案内する際、それまでのやりとりで得たログイン名や社内コードなどの情報を自動反映させることができ、質問者の入力負荷を軽減させる成果を得ることにも繋がった。

 実験は、2016年12月1日から2017年4月30日までの期間に行われ、導入により、問い合わせをする社員の満足度向上と、回答側の負荷の大幅軽減を実現させられるとの成果を得る形となった。

 この結果を受け、サッポログループは年内にも、サッポログループマネジメント株式会社が行う実際の業務にAIを利用することを発表。グループ内の各社でも順に実証実験を行い、AI利用を展開していくことを予定している。

 サッポロホールディングスは2016年11月にグループ創業150周年となる2026年までの10年間の方向性を2017年~2020年の4年間で取り組む基本戦略をまとめた長期経営ビジョン「SPEED150」を策定しており、その基本方針として「異次元スピードでの変革」を掲げている。社内に点在するマニュアルやFAQなどの業務ナレッジの整理や、属人的で非効率な業務の改善にAIを用いることはその一環であろう。

 働き方改革が叫ばれる中、サッポログループはAI導入によって、人財を成長分野へシフトさせる抜本的な構造改革を行うことが可能になり、業務改革がさらに加速していくことが予想される。

本コラムは「HRpro」の提供記事です