シェア自転車を無料資材に使ってしまえ?

 現代中国のシェアリングエコノミーを代表するサービスが、スマホで借りられるシェア自転車だ。利用は簡単で、たとえば大手のモバイクであれば事前に自分の電子マネーアカウントに紐付けたアプリをインストールし、あとは路上のあちこちで見つかるモバイクの車体のQRコードを読み取って解錠するだけ。乗り終えたら、再び施錠してどこにでも乗り捨てられるシステムである。料金は各社とも30分あたり0.5~1元と格安だ。

 中小業者のなかには、セキュリティコストをケチったことで車両が大量に盗まれて倒産する例も出ているが、最大手のモバイクと「ofo」は絶好調。各都市ごとに数万~数十万台もの自転車を投入し、街の風景をすっかり一変させてしまった。

 車両の乗り捨てが都市景観を損なうことや、交通の妨げになることに非難の声も出ているが、なにぶん便利であるうえに大気汚染対策にもなるため、当局も基本的に好意的な姿勢である。もっとも、いまやシェア自転車は街に普及しすぎたせいで、人々の間でなんとなく無料の公共物のように思われているフシもある。

 今年7月21日、広東省広州市内でいきなり歩道橋が割れ、階段部分が1メートル横にズレてしまう事件が発生した。階段を登りきった場所に大穴が空き、足を滑らせると地上に落下するという非常に恐ろしい状態になったのである。

 そこで地元の人たちが考えついた応急処置が、街にいくらでもあるofo社のシェア自動車を持ってきて、穴の上に置いてしまうことだった。三角コーンよりも安くてどこにでもある「資材」というわけだが、日本人の感覚では到底思いつかない斜め上の利用法だろう。

歩道橋に空いた大穴をシェア自転がふさぐ。様々な意味で大雑把さを感じる、中国らしい光景だと言えよう。現地報道より

 同様の例は他にも多く、今年5月には河北省でモバイク製のシェア自転車がマンホール工事の蓋がわりに使われていたことが報じられたほか、4月には北京市郊外の城中村(中国版のスラム)で、シェア自転車がゴミの柵がわりに使われている様子が撮影されている。