2点目は、一方で、中国独自の「言論統制」の影響下にある産業を除けば、自由競争下にあり、外資の独壇場である市場も意外なほど多いということである。特に一般消費財分野における欧米系ブランドのプレゼンスは極めて大きく、広告業界ではいまだにバジェットの70%が欧米ブランドからの発注とも言われている。日系企業も、自動車のように「国内産業保護」からジョイントベンチャーの設立を強いられている分野も一部あるものの、高付加価値な家電(デジタルカメラ・空気清浄機)や消費財(化粧品・おむつ・菓子類)、産業分野(先端医療機器・ケミカル・ロボット等)で善戦しており、白物家電・スマートフォン等で苦戦を強いられているのは、中国固有の問題というよりは、時代の趨勢であろう。

中国ベンチャー市場を読み解く6つのキーワード:まとめ

 これまで連載の前半として、急成長する中国ベンチャー市場を読み解く「6つのキーワード」をご紹介してきた。下の図は「6つのキーワード」を構成するキーワードを整理したものである。興味ある読者は、各回記事にて詳細をご覧いただきたい(バックナンバーはこちらから)。

中国ベンチャー市場を読み解く6つのキーワード:まとめ
(出所: Legend Capitalとの討議をベースにDI作成)
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 さて、次回からは、連載の後編として、主に「日本企業への示唆」を目的として、「中国と日本のベンチャー業界の関わりの歴史」から始まり、「中国で活躍する海外・日系ベンチャー」「中国から学ぶ日系大企業・ベンチャー」について、事例やインタビューも交えながらご紹介していきたいと思う。

最後に

◎ドリームインキュベータ・板谷より

 先日、本連載内容をベースに、ベンチャーイベント(BDash Camp札幌2017)の中国セッションに登壇させていただきました。そこで実感したのが、イベント全体を通じ、思いのほか中国成長市場に関心が高まっていることです。特にライブコマース、仮想通貨、といった新たな潮流を扱うセッションでは、中国というキーワード抜きには語れないようになってきています。

 次回からの連載後半では、そうした中国発イノベーションを取り込んでいる日本企業の事例や、果敢に中国成長市場に向き合うベンチャーの事例・インタビューをご紹介していきます。引き続き、ご笑覧下さい。

◎Legend Capital・朴より

 中国ベンチャー市場における政府のスタンスについても、何回かにわたって触れてきました。ただ、やはり大事なことは、政府の意思・政策・支援は「触媒」にはなり得るが、「最大要因にはなりえない」ということ。エコシステムの好循環と成長は、実に様々な要因から成立しています。

 本連載ではそれを6つに整理しましたが、実は枠組み自体は、他業界に通じる点があると思います。近年の韓国女子ゴルフ業界の復興劇もその1つです。ここまでの連載前半でも、日本の皆様にも示唆になる部分があれば幸いです。


この記事のまとめ: 中国ベンチャー市場を読み解く6つのキーワード
(6)政府の放任と規制の適切な調和
 ・3~5年の“放任” → 市場/主要プレイヤー形成後に”規制”

(筆者プロフィール)

板谷 俊輔
ドリームインキュベータ上海 董事兼総経理
東京大学工学部卒業、同大学院新領域創成科学研究科修了後、DIに参画。
北京大学外資企業EMBA。
エンタメ・デジタルメディア・消費財分野を中心に、大企業に対する全社改革(営業・マーケ改革、商品ポートフォリオ再構築、生産・購買コスト削減、組織改革、海外戦略見直し等)から、ベンチャー企業に対するIPO支援(事業計画策定、経営インフラ整備、常駐での営業部門立ち上げ、等)まで従事。現在は、DI上海に董事総経理として駐在し、現地政府・パートナーと連携しながら、日系大企業へのコンサルティングと中国・アジア企業への投資・事業育成を行う。

小川 貴史
ドリームインキュベータ上海 高級創業経理
東京大学工学部卒業後、ドリームインキュベータに参加。
主に、新規事業の戦略策定およびその実行支援に従事。 製造業(自動車/重工/素材)を中心に、IT、商社、エネルギー、医療、エンターテイメント等のクライアントに対し、構想策定(価値創造と提供における新 たな仕組みのデザイン)から、事業モデル/製品/サービスの具体化、組織/運営の仕組みづくり(実現性を担保したヒト・モノ・カネのプロデュース)、試験 /実証的な導入まで、一気通貫の支援を行っている。複数企業による分野横断的な連携や、官民の連携を伴うプロジェクトへの参画多数。

朴焌成 (Joon Sung Park)
Legend Capitalパートナー、エグゼクティブディレクター
韓国延世大学校卒業、慶應義塾大学MBA及び中国长江商学院MBA修了。延世大学在学中には、University of Pennsylvania, Wharton Schoolへの留学経験も持つ。
アクセンチュア東京オフィスを経て、Legend Capitalに参加。Legend CapitalではExecutive DirectorとしてEコマース、インターネットサービス、モバイルアプリケーション、コンシューマーサービス分野での投資を積極的に行う。韓国語、日本語、中国語、英語に堪能。
Legend Capitalは、レノボを含むLegendグループ傘下の中国大手投資ファンドで、ファンド総額は50億米ドルを超える。特にインターネット・モバイル・コンテンツ分野および消費財分野に強みを持ち、350社以上への投資実績がある。日系大手企業のLPも多数。