中国ベンチャー市場を読み解く6つのキーワード
(6)政府の放任と規制の適切な調和

□(事例1)オンライン動画サイト
 :市場形成・主要プレイヤー登場の「3年後」に規制を開始

 まず1つめの例は、古典的な事例として、オンライン動画サイトを見てみよう。2005年2月のYouTube誕生によって、中国でもオンライン動画サイトが注目を浴び始めていた。GoogleによるYouTube買収(2006年10月)と前後するように、中国でも多くのコピーキャットが生まれ、その数は4000社(!)にも達していたと言われている。当然、この4000社各社が適切なコンテンツ管理を行うとは到底考えられず、実際に非正規コンテンツも市場に大量に蔓延していた。当時の業界はまさにカオスだったと言えるだろう。

YouTube登場後に、数多くのオンライン動画サイトがローンチ
(出所: Legend Capital提供資料)

 しかし、2008年4月になって、満を持して政府が動き出す。中国当局(新聞出版広電総局)が、誰もが参入可能であったオンライン動画サイト事業に、「ネットワーク視聴許可証」(信息网络传播视听节目许可证)というライセンスを導入し、許可制事業に転換することとなった。ちょうどYouku(優酷)、Tudou(土豆)など先行者が市場をリードし始め、インターネット大手Baidu(百度)、Sina(新浪)、SOHU(捜狐)などの進出が一巡した、市場形成の「3年後」のタイミングである。

 以後、政府から様々な通達が企業に対して行われているが、現在では大手プレイヤーは10社弱にまで集約されており、彼らさえ遵守すれば、業界全体の秩序が保たれるようになっている。

 市場黎明期に4000社、しかも”やんちゃ”なベンチャー企業を全て管理するのは、中国政府といえども実質的に不可能。そこで、市場がある程度形成され、業界をリードできる有力企業が数社出現した時点で、規制をかける。最初の3年間は、中途半端な政府介入で競争・淘汰が遅れるくらいなら、「一切口出しはしないので、まず徹底的にビジネスベースでやり合ってくれ」、というところだろう。まさにドラスティックな「放任と規制」である。最大の勝ち組となったYouku、Tudouは、今でこそアリババの傘下入りを果たしたものの、出自は政府背景でも大手ネット系でもない、純粋な独立系ベンチャーであったことも付言しておこう。