フランスの銘酒アルマニャックを買い漁る中国

バブルの帝国よありがとう、しかし日本も負けじと25%増に

2010.12.16(Thu) 鈴木 春恵
筆者プロフィール&コラム概要

 パリから空路で南下すること約1時間、エアバスに代表されるフランス航空産業の本拠地、トゥールーズに到着するが、アルマニャック事務局のあるEauze(エオーズ)の町までは、それから車で1時間半という長旅。

フランスの厳しい原産地呼称統制

『三銃士』の国の銘酒であることをしめす、かつてのポスター

 TGVを使っても、移動時間の総計はさほど違いないというから、アクセスは決して便利とは言いがたい。だが、その分だけ、大自然に囲まれた地方ということは言えるわけで、ここはまた『三銃士』の故郷、フォアグラの名産地でもある。

 フランスの農産物やお酒には、原産地呼称統制(AOC)というのがある。

 例えば、シャンパーニュ地方(その中でも細かな規定があるが)からできる発砲ワインしかシャンパンと名乗れないというように、土地、特産物のブランド化を国家的に守るようなシステムが既に長く定着している。

 アルマニャックについても同様で、ブドウの品種、産地、醸造、蒸留の方法や期間まですべて、決められた規則をクリアしたものにしかこの呼称は認められない。

 ここで簡単にアルマニャックの製法について触れておく。秋のはじめに収穫された白ブドウを発酵させるのは白ワインの工程と同じだが、そのあと、アルマニャック独特の蒸留機によって加熱され、アルコール分の高い蒸留液が抽出される。

蒸留で抽出された、アルマニャックのもとになる液体。この時点では無色透明で、アルコール濃度は50パーセントほど。 試しに飲んでみると、洋梨のような香りがした

 よく比較して語られるコニャックと大きく異なるのがこの蒸留の過程で、アルマニャックがより時間のかかる蒸留過程を1回経るのに対して、コニャックは蒸留機の仕様もだが、2回の蒸留を経てアルコール濃度を上げてゆくという違いがある。

 この時点での液体は無色透明、アルコール度数は52~72.4%。これをフレンチオークの樽に入れて熟成させることによって、アルマニャック、というより広くブランデー一般に共通の琥珀色の銘酒に変貌させる。

 ところで、アルマニャックの熟成蔵の壁はしばしば黒く変色している。初めて見た人は恐らく、作り手の衛生観念を疑うだろうが、この現象はむしろ熟成が順調に進んでいることの証し。

 というのも、微量ではあるが、樽の中のアルコールは常に大気中に蒸発しており、それを栄養分とする、いわば善玉のカビが蔵に生息しているそうなのだ。

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出版社できもの雑誌の編集にたずさわったのち、1998年渡仏。パリを基点に、フランスをはじめ、ヨーロッパの風土や文化、人々の暮らしをテーマにした取材を、文と写真で展開している。


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欧州は観光ばかりでなく農業や地方の活性化、また少子高齢化対策などでも日本が学ぶべき点が多い。日本が課題とするこうした点を欧州ではどのように克服しようとしているのかの実例をお送りする。また、欧州で高く評価される日本の芸術・文化などのソフトパワーについてレポートする。