(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年7月31日付)

排ガス不正でポルシェにリコール命令 ドイツ、対象2万2000台

ドイツ・ライプチヒにある工場に止められたポルシェの「カイエン」(2016年3月9日撮影)。(c)AFP/dpa/an Woitas〔AFPBB News

 1990年代のこと。筆者がフィナンシャル・タイムズで最初に手がけた仕事は、ドイツ産業の取材だった。それは事実上、自動車産業を担当することを意味していた。90年代のドイツは、1950年代や60年代初めのデトロイトのようなところだったからだ。

 ドイツの自動車産業は我が世の春を謳歌していた。利益率は高かった。フォルクスワーゲン(VW)やBMWなどはほかのブランドに食指を伸ばし始め、ダイムラーはほかの産業に進出し始めていた。自動車会社の最高経営責任者(CEO)はボスの中のボスだった。世界を意のままにし、ドイツ政府を思うように動かしていた。

 しかし、自分は強く、冷静だと思っている人は、かえって間違いを犯しやすい。ここ数年で明るみに出た不祥事の大半は、かつて絶好調だった時代に撒かれた種から出てきたものだ。

 つい先日も、ドイツの5大自動車メーカー(VW、BMW、アウディ、メルセデス、ポルシェ)が60もの分野でカルテルを結んでいたとの告発がなされた。ブレーキシステム、タンクの容量、ディーゼル技術などに関して競争しないことを決め、1990年代から秘密裏に会合を重ねていたという。

 この業界の傲慢さを浮き彫りにする最も驚くべき事例は、ポルシェの「カイエン」で行われていた不正だろう。

 ドイツ政府は7月下旬、ディーゼルの「カイエン」のリコールと販売停止を命じた。かつてVWが使用していたものと同じ、ディーゼルエンジンの排ガス規制を逃れる不正ソフトウエアをポルシェも使っていたことを、連邦自動車庁が突き止めたのだ。

 2015年にVWのスキャンダルが発覚した際、ドイツのメーカー各社は問題のソフトウエアを自社製品からすぐに取り除く対応を取ったはずだ、と考えるのが普通だろう。だが、そうではなかったのだ。