原油市場に現れた2つの地政学リスク

ベネズエラより怖いサウジの政変リスク

2017.08.04(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50699
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 前述のニューヨーク・タイムズの記事も米情報機関筋からのリークがベースとなっており、米情報機関が今回の皇太子交代を快く思っていないことは確かだろう。欧米諸国にとって、ナエフ氏はサウジアラビア国内のアルカイダをはじめとする過激派の掃討に体を張って対処した「対テロ作戦」の盟友である。一方、ムハンマド氏は「中東地域のトラブルメーカーである」との認識が欧米の情報機関の間で定着している。

 サウジアラビアのサルマン国王は7月20日、「テロ対策を担当する国王直属の部署を新設する」という勅令を発表した。これにより内務省の下にあった検察や治安部隊を指揮する権限が王宮に移り、ムハンマド新皇太子が一段と反対勢力ににらみを効かせることが可能となった。7月24日付ロイターは「現国王は7月に息子への譲位を発表する声明の事前録音を行い、早ければ9月にこの発表が放映される」と報じている。だが、ここまでムハンマド氏を庇護して重用する強行策がはたして吉と出るのだろうか。

 7月26日付OILPRICEによると、ムハンマド皇太子が国王になるための最後の障害はムトイブ国家警護隊隊長(アブドラ前国王の息子)の存在のようである。国家警護隊は約10万人の精鋭部隊を擁しており、国防軍以上の実力を備えているとされている。サルマン親子が生前譲位を強行しようとすれば、国内で武力闘争が勃発する可能性すらある。

 筆者は、秋以降、原油価格は下落傾向にあるとの見方を変えていないが、「2つの地政学リスクによる原油価格の高騰」というシナリオも視野に入れる必要があると考え始めている。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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