原油市場に現れた2つの地政学リスク

ベネズエラより怖いサウジの政変リスク

2017.08.04(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50699
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 ただし、PDVSAのデフォルトをプラス材料と捉える市場関係者もいる。PDVSAがデフォルトを起こせば、世界の原油市場(日量約9500万バレル)にとって需給状況が改善することから、「原油価格は1バレル=7ドル上昇する」との試算がある(英バークレイズ)。

嵐を呼びそうなサウジアラビアの「政変」

 このように秋にかけてベネズエラの原油生産が波乱要因になるのは確実な情勢だが、筆者が最も懸念するのはやはりサウジアラビアである。

 6月21日、サウジアラビアの皇太子だったナエフ氏(57歳)が突然解任された。日本経済新聞は「若返るサウジはどこへ」(7月31日付)という記事で、その内幕をニューヨーク・タイムズ(7月18日付)などの記事を基に次のように伝えている。

 イスラム教のラマダンと重なった6月20日夜、サルマン国王はナエフ皇太子を呼び出し、皇太子の地位を我が子であるムハンマド氏(31歳)に譲り内相の職も辞するように迫った。携帯電話を取り上げられ外部と連絡できなくなったナエフ氏は抵抗をあきらめ、翌日の明け方に退任に同意したという(その後、ジェッタの宮殿で軟禁状態にある)。

 サウジアラビア政府は皇太子の交代は粛々と行われたとのスタンスを崩していないが、7月8日にドイツのハンブルグで開催されたG20サミットにサルマン国王とムハンマド皇太子の両者が欠席したことは、宮廷に異常な政変が生じたことの何よりの証左ではないだろうか。

 しかし、なぜ今なのか。ZeroHedge(7月24日付)は、「UAE主導によるカタール首長失脚を狙ったクーデターが米CIAに阻止されたため、これに焦ったサウジアラビアのサルマン国王親子が、CIAとのつながりが深いナエフ氏をあわてて失脚させた」という米情報機関筋の分析を掲載している。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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