原油市場に現れた2つの地政学リスク

ベネズエラより怖いサウジの政変リスク

2017.08.04(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50699
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原油価格を押し上げるベネズエラの混乱

 米国の原油生産自体は引き続き好調であり、石油掘削装置(リグ)稼働数もそのペースが鈍化したとはいえ増加し続けている。このような状況下で原油価格は1バレル=50ドルが壁となっていたが、これを突き破る最後の一押しとなったのは、ベネズエラの地政学リスクである。

 ベネズエラは世界最大の原油埋蔵量を誇り、原油生産量はOPEC第6位である(日量190万バレル強)。この有力産油国の原油生産量が、政情不安により大幅に減少するとの見方が強まっている。

 2014年後半の原油価格急落以降、ベネズエラでは長らく混乱が続いていた(財政均衡原油価格は1バレル=200ドル超)。今回、混乱が一気に深まった理由は、7月30日にマドゥロ大統領が「制憲議会」選挙を強行したからである。制憲議会とは、憲法改正を目的とした臨時の立法機関だ。議会の無効化を含む強い権限を有しているうえ、政府のコントロール下にある選挙管理委員会が候補者を選定するため、政府の意図に沿った恣意的な運用が可能になるとされている。

 前回はチャベス前大統領が1999年に国民投票を行った上で制憲議会を招集した。だが、マドゥロ大統領は今回こうした憲法上の手続きを無視している。そのため「独裁につながる」として国内外から非難されていた。

 800万人以上が投票したとされる制憲議会選挙は即日開票され、与党の統一社会党が全545議席を獲得したことが判明した。同党党首のマドゥロ大統領は「我々の選挙史上最大の投票だ」と正当性を誇示し、速やかに憲法改正の手続きに入る意向を示した。

 これに対し米トランプ政権は「大統領と政府が同国の民主主義を損なっている」として、米国の管轄下にあるマドゥロ大統領の資産凍結などの制裁を発動した。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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