昭和11年のチャーハン、お米の多さにはワケがある

「栄養と料理カード」でたどる昭和レシピ(1)チャーハン

2017.08.04(Fri) 三保谷 智子
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「炒」とは中国料理の調理法のひとつで、材料を油で短時間に強火で炒め上げる方法をいう。パラリと炒め上がった一粒一粒のごはんに油がのり、具との調和を味わうチャーハンは、材料も作り方もシンプルだ。けれども、おいしく作るにはコツがある。

 創刊2年目の1936(昭和11)年12月号に「炒飯(チャオファン)」、具体的な料理名としては「芝えび入やき飯」がある。「やき飯」という料理名を懐かしく感じるのは、明治生まれの祖父がチャーハンをやき飯と言っていたのを思い出したから。中国料理が好きで、法事でも外出したときの食事でも「○○飯店」が多かった。

『栄養と料理』1936(昭和11)年12月号の表紙と「栄養と料理カード」。材料は5人前と1人前が併記されている。
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 同号では、1人分でごはん350g、卵90g、ラード20g。350gのごはんは、現在の外食の大盛りカレーライスのごはんに匹敵する分量だ。かつて日本人は摂取エネルギーの約70%を米からとっていた。

 同誌に折り込まれた献立表には、1日の熱量は2200kcalとある(当時、熱量の単位にCalが使われていたが、本記事では同量であるkcalで表記する)。その内訳は、米3合(450g)で1550kcal、副食物(おかず)は650kcal。1日に必要なタンパク質70gの半分は米から、残りは副食物からとるように考えた、と解説があるくらい、おかずはほどほど。現在のような豊かな食生活からは、想像もつかないような時代だった。

 貴重な卵を1人分2個も使い、炒める油はラード(豚脂)で1人分20g。作り方は、中華なべで少量のラードを溶かし、芝エビ1人分50gを炒めてとり出し、残りのラードを溶かしてといた卵液を加え、卵の固まらぬうちにごはんを加えてかき混ぜ、エビを戻し入れて塩、しょうゆ、味の素で調味する。1人分の熱量は888kcal、価格は15銭。

 この年は、作り方を記載したカード裏面に、料理にちなんだ短歌が添えられている。

「芝えびも 色あざやかに まじりたる 炒飯 食せば 楽し 夕餉の」
 

 国文学を教えつつ同誌の編集にも関わった先生の作と聞くが、食事は質素でも心豊かな時代だった。

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三保谷智子(みほやともこ)

栄養と料理』元編集長。2011年4月から香川昇三・綾記念展示室勤務。学芸員。

東京都出身。1977年立教大学文学部史学科卒業後、香川栄養専門学校栄養士科(現 香川調理製菓専門学校)へ進学、「栄養士」の資格を取得。その後、1979年女子栄養大学出版部雑誌編集課に入職、約30年『栄養と料理』の編集に携わる。1988年より2011年まで、10年間編集長を務める。途中、同部マーケティング課、書籍編集課に在席。

独立行政法人国立健康・栄養研究所外部評価委員。「食生活ジャーナリストの会」会員、NPO法人「野菜と文化のフォーラム」会員、NPO法人「くらしとバイオプラザ21」理事。現在、『栄養と料理』で連載「レシピの変遷シリーズ」を執筆中。


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