すでにご存知の方も多いだろうが、訪日外国人の数が政府の予測を上回って伸びてきている。これまで、官民一体となって取り組んできたプロモーション(ビジット・ジャパン事業)や制度改革が実を結びつつあるようだ。2015年には約1,974万人(日本政府観光局の統計データより)を数えたことを受け、政府は2020年に4,000万人という目標を掲げるという。

そして訪日客が増えると、当然ながら宿泊客も増えてくる。観光庁の「宿泊旅行統計調査」(平成29年4月分(第2次速報値))によれば、2016年の外国人延べ宿泊者数は約694万人で5年前の約184万人と比べて約3.8倍にも増加している。

(観光庁「宿泊旅行統計調査」(平成29年4月分(第2次速報値))より作成)

一方で国内の宿泊施設の需給状況には不足感が出てきている。

同じく観光庁の「宿泊旅行統計調査」によれば、全国の宿泊施設客室稼働率は2011年時点で51.8%だったのが2016年時点では59.7%と増加している。特に都市部のビジネスホテルなどは稼働率も高まっており、2011年時点で70.9%だった客室稼働率は2016年時点には83.3%と全国水準以上に伸びている。

こうした急増する訪日外国人の宿泊施設として注目され始めているのが、自宅の一室やマンションの空室を観光客に貸す「民泊」である。民泊が注目されるようになった背景には、世界的な民泊マッチングサービスである「Airbnb(エアービーアンドビー)」の存在が大きいだろう。

これまで日本では旅館業法の特例として一部のみが認められている状況であったため、本格的な普及には至っていなかった。しかし、2017年6月に「住宅宿泊事業法案」(民泊新法)が成立し、2018年1月から施行される見通しとなった。晴れて、全面的に合法となることとなったのだ。

こうした状況を商機と見て、大手企業が続々と参入を表明している。

ECや旅行代理業などを展開する楽天と、不動産・住宅情報サイトを運営するLIFULLは共同出資により楽天LIFULL STAYを設立した。同社は民泊領域において、オーナーとユーザーのマッチングをはかるプラットフォームを構築するという。さらに、アメリカの世界最大級民泊サイトHomeAwayとも業務提携を結び、着々と民泊領域での事業展開を準備している。

また、投資用マンション販売や不動産賃貸管理事業を展開するシノケングループでは、2015年から民泊用物件を開発し2017年4月から分譲開始。そして7月にはブロックチェーン技術を活用したシステム開発を行うChaintope社と資本業務提携し、ブロックチェーンを応用した民泊サービスの開発へと乗り出した。シノケンが管理する民泊物件の利用権をブロックチェーンで管理するシステムで、スマートフォンを鍵代わりにするスマートロックなどの機能を提供する予定だ。