4.インドはエスカレーションで対抗する可能性

 インドはどう対応するだろうか。6月から続くインドと中国との国境警備当局のにらみ合いでは、インドは非常に抑えた対応をしている。

 中国側が1962年の戦争を引き合いに出して、インドが兵を引かない限り交渉もしないと、繰り返し述べているのに対し、インド側はほとんど沈黙を守っている。インドは落ち着いて対応している。

 もしこのまま中国側が攻撃に出なければ、事態はエスカレートしないで収まっていくかもしれない。

 しかし、にらみ合いが行われている場所の背後ではインドも中国も軍を準備させており、攻撃が行われた時の備えをしている。もし本当に中国がインドを攻撃するようなことがあったら、インドはどうするだろうか。それには、まず、中国がどのような攻撃をするか考えなくてはならない。

 もし中国が、インドを攻撃することを想定した場合、過去の1962年、1967年、1986年の例をみてみれば、中国の軍事行動は限定されたものになる可能性がある。

 例えば1962年に起きたことは、中国の陸軍は攻撃を仕かけたが、空軍は爆撃などに従事していない。

 1967年の戦闘も陸軍だけで、ナトゥナ峠、チョーラ峠周辺に限定されていた。1986年の事例に至っては、中国は侵入しただけで攻撃を行っていない。

 これには中国側の合理的な理由がある。まず、中国が、インドよりも「強い」ことを示すだけのために攻撃をすることを想定した場合、大きな戦争をする必要はない。

 次に、標高が高い方が有利というのは、陸上戦の場合だ。もし空軍を投入していれば、飛行場が標高の高い地域にある中国の飛行場では空気が薄いため、戦闘機は十分な揚力を得られず、多くの燃料や武器が積めない。

 空軍を投入せず、陸上戦だけに限定した方が、中国にとって有利なのだ。さらに、もし中国が大規模な攻撃をした場合、米国やロシアが仲介に乗り出し、圧力をかけてくる可能性が高い。

 米国やロシアは先に攻撃した中国よりもインドを支持する可能性が高い。だから、もし中国がインドを攻撃するならば、陸上戦だけに限定し、核危機になりそうな大規模な作戦にならないよう、地域も限定的に抑えておいた方がいい。