3.過去の事例からみた中国の真の目的

 しかし、もし中国が本当にインドを攻撃するとしたら、どのような目的があるのだろうか。領土が欲しいのだろうか。

 過去の中国の行動にそのヒントが隠されている。過去、中国がインドに対して攻撃的な軍事行動を行ったことは、少なくとも3回ある。1962年の印中戦争、1967年のナトゥラ事件・チョーラ事件、1986~87年に起きた危機である。

 これらの3つの軍事行動の目的は何だったのだろうか。

 これらの3つの事件はすべて領土紛争を原因として発生しているのは確かだ。1962年の印中戦争では、西はカシミール、東はアルナチャル・プラデシュ州(中国名:南チベット)まで、インド中国双方が自国領だと主張しているところで戦った。

 1967年のナトゥラ事件・チョーラ事件においても、印中両国の境界を示す国境フェンスの建設において、わずか30センチの土地がどちらに帰属するかをめぐって5日間にわたり交戦した。

 1986~87年の危機も発端は、中国軍がインド側のスムドロング・チュ(印中両方が領有権を主張するアルナチャル・プラデシュ州とブータンの接合点)へ侵入したことがきっかけであった。

 しかし、このような一見して領土紛争に見える3つの戦闘の真の目的は、領土でなかった可能性が高い。

 1962年の印中戦争においては、中国軍が圧倒的に有利な戦闘を展開していたにもかかわらず、自国領と主張していた領土のかなりの部分から一方的に撤退し、結局ほとんどがインド領になってしまった。

 1967年のナトゥラ事件・チョーラ事件においても、戦闘は中国側有利だったにもかかわらず、中国軍が一方的に撤退したため、やはりインド領になった。

 1986年中国軍の侵入については、インド軍が1個旅団派遣するファルコン作戦を実施、さらに全土で対中国演習を行うチェッカーボード演習を計画し、それに驚いた米ソが仲介に乗り出し、中国側は領土を取るどころか、インドとの関係改善を迫られる結果になった。

 つまり、中国側のインドに対する軍事行動は、領土紛争を理由にして起きているものの、実際には、本気で領土を確保しようとしてない。

 そもそも、中国とインドが争っている領土は、あまり魅力的な領土ではない。