2.ミリタリーバランスは中国に有利

(1)中国側の動き

 このように中国がインドに対して脅しをしかける背景には、中国の方が軍事的に有利な現実がある。その根拠は、地形、インフラ、周辺国への影響力の3つである。

 中国が地形的に有利なのは、標高が高いからである。標高が高いところから低いところに攻めて行くときは、上から下を見るから全体を見渡してどこに向けて大砲を撃つべきか、分かりやすい。

 坂を駆け下るから攻めやすいこともある。弾薬やその他の補給品、重量物も運びやすい。しかも、もともと標高の高いところの空気に慣れている側は、高山病を克服できる。逆に、低いところから高いところへ攻めて行くインドはすべてで不利なのだ。

 そして、中国のチベット地域では、インフラ建設によって、さらに中国側に有利な状況を作りつつある。鉄道や道路網、トンネルが建設され、飛行場が増設されつつある。

 当初これらのプロジェクトは、江沢民が中国の国家主席だった時代の「西部大開発」計画としてスタートし、民生用のプロジェクトであったが、インフラ建設に伴い中国軍の移動も容易になった。その結果、中国軍の展開が活発になり始めたのである。

 国境地帯における中国側からインド側への侵入事件は、2011年は213件であったが、2012年は426件、2013年は411件、2014年は460件と上昇してきた。

 2015年10月に南シナ海で航行の自由作戦が始まる時期と同じくして数が減り、2015年は360件になったが、2011年に比べればまだ多い状況が続いている。中国は、戦闘機や弾道ミサイルの配備も積極的に進めている。

 さらに、中国は印中国境防衛にかかわる周辺国、パキスタン、ネパール、バングラデシュなどでも影響力を拡大させている。周辺国への政策もインフラ建設や軍事力の展開がメインだ。

 特にパキスタンへは「一帯一路」構想の一部「中国パキスタン経済回廊」構想に基づいて、印パ間で領有権を争っているカシミールで道路建設を行い、パキスタン軍との共同国境パトロールなども実施している。

 パキスタンへの武器の輸出は顕著で、インドは特に中パ間で共同開発した「JF-17戦闘機」を懸念している。

 ネパールへも道路を延伸し、武器を密輸している(インドとの協定でネパールはインドの許可を得ない限り武器を輸入できないことになっているから、中国からの輸入は密輸にあたる)。

 そしてバングラデシュに対しても、港湾建設や武器輸出などを通じて影響力を行使し始めている。

 武器は高度なのに乱暴に扱うからすぐ壊れ、修理や弾薬・修理部品の供給に依存する。中国製の武器を輸入するということは、中国に依存することを意味する。これら周辺国で中国製の武器が増えていることは、中国の影響力が増していることを示しているのだ。