5.日本は備えなければならない

 以上をまとめると中国は、ブータンなどの第三国に自らの影響力を認めさせるために、インドに軍事的な圧力をかける場合があり、それは場合によっては、限定的な軍事攻撃に至ることも考えられる。

 その場合、インドは事態を収めようとするよりも、エスカレートさせて対応する可能性も考えられる。

 では、このような事態に日本はどうするべきだろうか。

 実は、印中国境の問題は日本の安全保障に深くかかわっている。中国がインドとの国境紛争に多くの資金や戦力を割けば、中国が日本に対して使う資金や戦力は少なくなる可能性があるからだ(例えば日本正面に配置していた戦闘機やミサイルの部隊を、インド正面に配置しなおすことなどが考えられる)。

 中国は国防費全体の4分の1を印中国境方面に投じているものとみられている。そのため、日本がインドの国境防衛力強化に協力して、中国により多くの国防費をインド側で使うように仕向けることは、日本にとって有用となる。

 その際にどう協力するのか。危機に至る前の平時の協力と、危機になってからの協力と2つの方法が両方必要だと考えられる。

 危機が起きる前にインドへの協力としては、例えば、インドの国境防衛力を向上させるために、インド側が必要としている道路網、鉄道網、橋、トンネル、空港、ヘリパッドなどの建設が考えられる。

 これは、民生用のプロジェクトとして実施可能なもので、実際、日本はインド北東部地域で道路建設に従事する権利を得た唯一の外国である。積極的に機会を利用すべきである。

 また、防衛技術協力、防衛装備品の輸出も積極的に進めるべきである。すでに米国は第17軍団の装備を供給して協力しているが、日印間ではレーダー網の構築などで協力する余地があるだろう。

 また国境地域を衛星を使って宇宙から監視する能力は、インドもかなり進んでいるので、日本とインド、米国との間で学び合う関係ができるはずだ。