(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年7月25日付)

英国、EU離脱後はアジアで存在感強化へ 軍配備も検討と英外相

オーストラリア・シドニーで、英豪外相・国防相会談に臨むボリス・ジョンソン英外相(左から2人目、2017年7月26日撮影)。(c)AFP/Brendon THORNE〔AFPBB News

 ベルギーのパッシェンデールにおける激戦で連合国軍とドイツ軍の兵士・数十万人が命を落としてから1世紀が経過したが、第1次世界大戦がなぜ始まったかについてはいまだに議論が続いている。

 ある学説によれば、欧州は長らく続いていた平和に魅了されていたという。欧州大陸の帝国が協調し、暴力を伴う一般的な小競り合いを避けてきたことも、人々が戦いのない現実に慣れきってしまう事態を招いた。分別を持つような経験がなかったために、人々は好戦的な愛国主義におぼれて戦争に突き進んでしまった、というわけだ。

 現在、西側世界の荒れた地平線には、第1次大戦に肩を並べる甚だしい事態は見られない。ただ、荒れていることに変わりはない。自由主義の秩序がほかの勢力に包囲されているという感覚も当時と似ているし、あえて言わせてもらえば、どんなトラブルなのかを知らずに自らその方向に突き進んでしまうおめでたさも似ている。

 ブレグジット(英国の欧州連合=EU=離脱)、ドナルド・トランプ氏の米大統領就任、ジェレミー・コービン氏の英労働党党首就任、そしてそのほかの異例な出来事――これらの背景については、1つの説明が受け入れられている。

 いわく、有権者は賃金の伸び悩みと不況に動揺している。エリート層は過剰な物欲とテクノクラートのミスで面目を失った。状況があまりにひどいために、人々は劇的な変化に関心を示している、という具合だ。

 今のところは、これが最も有力な仮説だ。しかし、正反対の見解に耳を傾けるのも一興だろう。つまり、急進主義を生んだペトリ皿は一般大衆の苦しみではなく、秩序ある時代が長く続いたことだったとしたら、そして有権者がリスクの高い変革を進めるというアイデアをもてあそんでいるのは(比較的)よき時代から生まれた慢心のためだったとしたら、一体どうなるだろうか。