【1】 「生産性向上」の目的を明らかにする

 生産性向上の実現成果としては、「長時間労働の是正・時短」「休日取得数の向上」などがあげられる。「時短による生産性向上」を進める側としては“自明の理”かもしれない。だが、従業員はそうは考えていない。理由は以下の4点である。

(1)そもそも業務量が多く、時短の実現は到底できないと考えている

(2)“時間投入して成果をあげる”ことが常識であり、時短自体に懐疑的である

(3)すでに時短は図られていて、これ以上はムリ、あるいは必要性がないと考えている

(4)生産性向上・時短によって実収入が減るため、やりたくない

 特に4点目は、多くの従業員が思っていながら口には出さない本音・真実である。また、一番やっかいなのが2点目だ。これは「会社のために長時間働いているのに、あれこれ言われたくない」という従業員心理の表れである。

 このように従業員は立場や仕事・生活の状況・環境によって考えることが異なり、一枚岩ではない。したがって従業員に対しては、“世の中の流れ、社会からの要請”と、生産性向上の共通目的・目指すゴールを「働き方の指針」として具体的に伝え、納得してもらうことが大切だ。

 働き方改革を先行して進めている企業は、規模の大小かかわらず、業績向上との関連性、採用競争力といった経営成果・ゴールと結びつけて活動している。時短・残業削減だけを目的化して進めるのは避けるべきであると強く主張したい。

【2】 仕事の中身・働く実態を見える化する

 生産性向上とは、仕事のやり方を継続的に見直す(=改善する)ことと同義である。改善は「対象を見える状態にする」ことから始まる。「見える化なくして改善なし」なのだ。