当座預金から資金が引き出される悪夢

 さらにやっかいなのが金利の動向である。

 出口戦略の途中で、意に反して金利が上昇してしまった場合、日銀がこれを制御するのは極めて難しくなる。日銀の当座預金には現在、約350兆円の資金が積み上がっているが、このうち、金利が付与されてるいるのは約200兆円、ゼロ金利となっているのは約100兆円であり、残りの一部にはマイナス金利が適用されている。

 これまでは金利がほぼゼロの状況であり、他に有望な融資先がなかったことから、銀行は当座預金をそのままにしていた(いわゆる“ブタ積み”)。しかし、金利が上昇した場合、ゼロ金利以下の当座預金を銀行が保有しておくことは自らの損失拡大につながる。量的緩和策の本来の意図とは別に、銀行が当座預金から資金を一斉に引き出す可能性は否定できない。

 もし、現在の状態で当座預金から多くの資金が流出すれば、一気にインフレが加速するリスクがある。日銀や財務省など金融当局にとっては何としても避けたいシナリオである。当座預金からの資金引き出しを防ぐには、市場金利の水準に応じた金利を当座預金に付与する以外に方法はない。

 だが、預金の額が額だけに金利も桁外れだ。300兆円の当座預金に3%の金利を付ければ、それだけで9兆円もの支出となる。とうてい日銀の利益でカバーできる水準ではなく、最終的には税金など何らかの形で国民が負担する結果となるだろう。この決断が政府にできるのかは何とも微妙なところだ。

 しかしながら、時期が遅くなったとはいえ、日銀の潜在的損失について議論できる環境が整ったことは喜ばしいことである。量的緩和策は日本人自身が決断した政策であり、その後始末についても、当然、自らが決断していかなければならない。

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