(英エコノミスト誌 2017年7月8日号)

モスルをISから「解放」 イラク政府が勝利宣言

イラク北部モスルの荒廃した旧市街の様子(2017年7月9日撮影)。(c)AFP/AHMAD AL-RUBAYE〔AFPBB News

戦いに勝つ前から、イラクの新しい夜明けの希望はしぼみつつある。

 花火が発注され、街頭でのパーティーが企画された。イラク政府は、アブバクル・バクダディが率いる自称カリフ制国家の崩壊を祝う行事を1週間行う準備をした。

 チグリス川とユーフラテス川が作り出した広大な沖積平野を3年前に制圧し、イラク北西部やシリア、そしてそのほかの国々でおびただしい数の犠牲者を生んだ過激派組織「イスラム国(IS)」が、ついに最期を迎えようとしている。

 シリアでは7月4日、米国主導の部隊がISの首都ラッカの旧市街を取り囲む壁を突破した。また本誌エコノミストが印刷に回った7月6日現在、イラクの都市モスルは、旧市街の一部を除いて政府軍が奪回していた*1

 しかし、モスルの解放を祝うとしても、それに適した舞台を見つけるのは難しいだろう。ISと有志連合があまりにも多くのモスクや廟(びょう)を破壊してしまったため、歴史的な価値のあるものはあまり残っていないからだ。

 十字軍の時代に建てられ、ISのバグダディ容疑者が「カリフ」を名乗る場に選んだヌーリ・モスクは壊された。ユダヤ人街も、修道院の市場も、スンニ派のシルクロードの宿場町らしい格子つきのバルコニーや彫刻を施した石造りの建物も無くなった。

 12世紀にこの地を訪れたスペインの旅行作家イブン・ジュバイルは、「腰を下ろしてチグリス川を眼下に見渡すなら、この地よりも崇高な、あるいは美しいところはあり得まい」と記している。

 だが今や、川で分けられている街の片方はワナだらけで、もう片方は砲撃でこなごなだ。旧市街のほとんどが含まれるモスルの西側は、ほぼ半分が破壊されている。ある外国人の見立てによれば、その数は恐らく2万軒前後だ。米軍のある将官は廃墟を見て回りながら、「まるでドレスデンだ」とつぶやいていた。

*1=イラクのアバディ首相は10日、モスルを奪還し、ISとの戦いで勝利したと正式に宣言した。