BtoB向けモールの運営からニーズを察知

 Paidが生まれたきっかけとなったのは、2002年からラクーンが運営しているBtoB向けの卸・仕入れサイト「スーパーデリバリー」だった。当初、地方の小売店の与信は取れないという前提のもとクレジットカード決済だけに対応していたが、「掛売りに対応してほしい」という要望が殺到したことを受け、金融機関と連携して与信システムを構築することにしたのである。

Paidの管理画面。与信管理や代金回収業務などすべての請求業務を代行する

 無謀とも思えたこの試みだったが、未回収が発生して試行錯誤を繰り返しながらも、結果的にスーパーデリバリーの売上は飛躍的に向上していった。「やはりBtoBの掛売りには、大きなニーズがあるのだなと、あのとき痛感した」と石井氏は振り返る。

 こうしてスーパーデリバリーを利用するアパレル・雑貨メーカーだけに向けて提供していた決済システムを取り出し、2011年10月よりPaidとして一般向けにサービスを始めた。

 「Paidとしての提供は5年半ほどですが、請求代行サービスにまつわるノウハウは、10年以上の月日をかけて積み重ねています。掛売りの問題に対して、同じような悩みを持っている人は、まだまだいるはず。ラクーンの経営理念にある通り、Paidでもっと多くの企業活動を効率化し便利にしていきたい」(石井氏)。

効率化の鍵は“守り”は任せて“攻め”に徹すること

 Paidの導入企業は、現在約2,300社に上る。BtoB企業の掛売りの文化は、今に始まったものではないが、昨今Paidのような請求代行サービスの必要性が高まっている背景には、「インターネットの普及」と「消費者の趣味・嗜好の多様化」が大きいのだという。

 「対面での取引や、親しい人間関係の間でビジネスが行われている間は、信用をベースとした掛売取引が成立していましたが、インターネットで注文を受けるようになると、全国から注文が入るようになってきます。また、価値観が多様化する中で小口決済が増えたことにより、請求業務の負荷が大きくなってきている。数万円の請求に対し、旅費などのコストをかけてまで回収するのは、現実的ではありません」と石井氏は語る。

 実際、こうしたBtoBでECビジネスを行っている企業で導入されているケースが多いPaidだが、他方で、上場企業の新規事業やベンチャー企業でPaidを採用している企業では、少し異なった狙いがある。

 それは、「営業マンを真の営業活動に集中させたい」というものだ。

 BtoBの請求業務は、営業マン自身が行うケースが多い。1件あたりの作業負荷はそれほどではなくとも、それが積もり積もれば大きなものになる。不幸にも未回収が発生した際には、上司からのプレッシャーがかかるとともに、せっかく良好な関係が築けていた顧客のもとへ督促をかけなければならない。こうしたネガティブな気持ちは、ストレスとなって澱のように溜まり、業務効率に影響を与えることは避けられないだろう。

 「“守り”である請求業務は私たちにお任せいただき、お客様には良い商品やサービスを作って売るという“攻め”に徹してもらいたい。Paidは保証料として取引額の1.9%〜3%をいただくビジネスモデルになっているので、お客様の成長が私たちの成長にもつながり、Win-Winの関係を築いていけると考えています」(石井氏)。

 目指すは、トップ営業マンが離れない”攻めの体制整う”組織作り。決済にまつわる業務の効率化がその大きな要素となるはずだ。