アクセルスペースは年末に衛星3機を打ち上げ、「AxelGlobe(アクセルグローブ)」計画をスタートさせる。同計画では50機の超小型衛星群で世界中を毎日観測。宇宙からデータという「宝の山」が降ってくる「宇宙ビッグデータ」時代が幕をあける。(提供:アクセルスペース)

 7月14日、気象情報会社ウェザーニューズが自社の専用衛星「WNISAT-1R」を打ち上げる。目的は北極海航路の海氷の観測。今や一企業が自社の「My衛星」を持つ時代になった。

 約50cm立方の超小型衛星を開発したのが、東大卒の若者らが中心となり立ち上げた超小型衛星スタートアップ(ベンチャー)、アクセルスペース(東京都千代田区)だ。同社こそ、日本の宇宙産業に革命をもたらし、現在の宇宙ビジネスブームをけん引する「本命」と言っても過言ではない。

 その「事件」が起こったのは2015年秋。日本の宇宙開発史上初めて、スタートアップ企業のアクセルスペースが合計19億円もの大型資金調達に成功したのだ。この事件を皮切りに、宇宙スタートアップが次々と大型の資金調達やスポンサー獲得に成功、宇宙ビジネスに追い風が吹き始める。

「それまで政府は宇宙ベンチャーに非常に冷たかったが、完全に方向性が変わった」とアクセルスペースの中村友哉社長はふり返る。

 そして2017年5月、内閣府が「宇宙産業ビジョン2030」を発表。「新しい宇宙産業はベンチャーが主導する、政府としても最大限の支援をするという、かなり踏み込んだ内容」と中村社長も評価する。

 今年、アクセルスペースはさらに飛躍する。「WNISAT-1R」を含め4機の衛星を打ち上げる。特に年末に打ち上げ予定の3機は、宇宙から50機の衛星群で毎日、世界中の経済活動を捉える「AxelGlobe(アクセルグローブ)計画」の最初の3機。AxelGlobeによって「宇宙ビッグデータ」時代が幕を開け、宇宙利用が劇的に広がると期待される。

 しかし、ここに至るまで同社は紆余曲折、茨の道を乗り越えてきた。大型資金調達成功の舞台裏と、今後AxelGlobeによって私たちの生活がどう変わるのか、中村社長にじっくりと伺った。

アクセルスペース代表取締役 中村友哉さん。1979年、三重県生まれ。東京大学博士課程修了までに3機の超小型衛星の開発に携わる。2008年にアクセルスペースを設立。右は年末に3機打ち上げ予定の衛星GRUSの2分の1模型。