火星の土壌「レゴリス」でも作物は育てられるか?

イーロン・マスク構想で現実味を帯びる宇宙農業研究

2017.06.30(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要
ハッブル望遠鏡が撮影した火星。(写真:NASA, ESA, and The Hubble Heritage Team(STScI/AURA))

 実業家のイーロン・マスク氏が人類の火星移住の必要性を主張し、この10年で火星への飛行が実現する可能性もあると述べている。火星移住計画が現実味を帯びてくれば、「宇宙における農業の確立」が、より現実的な課題となるだろう。

人類は「複数の惑星の種」に

 民間宇宙開発企業「スペースX」の最高経営責任者でもあるマスク氏は、雑誌『New Space』2017年6月号に「Making Humans a Multi-Planetary Species」(人類を複数の惑星の種にする)という記事を発表した。2016年9月にメキシコで演説した同社の火星移住計画の内容を論文にしたものだ。

「この世の終わりとなる出来事が起きることを歴史は暗示している。そうならぬための方法は、宇宙におよぶ文明と、複数の惑星の種の実現だ」と述べ、移住にふさわしい天体として、超高圧大気の金星でも、太陽に近すぎる水星でも、小さすぎる月でもなく、火星を挙げている。さらに、地球と火星を行き来する輸送システムの計画を示し、「事が極めて順調に行けば、(実現化は)10年以内かもしれない」と述べている。

 一方で、この計画に対して、「いったい食料をどうするのか」と指摘する声も上がっている。マスク氏は現時点で、食料確保の具体的方法を明確には示していない。火星に達することを考えるのが先決であり、食料などの課題の解決策は後からついてくるという考えのようだ。

運べなければ作るしかない

 マスク氏が食料確保の方法を考えているかは分からないが、世界の研究者たちは、火星以遠の天体に人類が到達する未来を想定して、食料確保の方法を真剣に考えている。

 研究者たちの共通認識となっているのは、人類が月で活動する場合の食料確保の方法は、火星の場合には通用しがたいということだ。月まで約38万km。宇宙船では3~4日ほどなので、食料を地球から届けたり、人が地球に帰ったりすることは可能といえる。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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