小泉元首相の改革は「トップダウン」と評されたが、国民のそうした思いをすくい上げているという点では「ボトムアップ」だった。また、どれだけ採用されたかは別として、「目安箱」が設置され、国民から改革案の提案を募集してもいた。国民の声をすくい上げ、それを改革に生かそうという姿勢を国民が感じていたという点では、実は「ボトムアップとしてのリーダーシップ」として機能していたのだと思われる。

 同様に、トップダウン型の改革者として捉えられがちなカルロス・ゴーン社長も、新聞でのインタビューで興味深いことを述べている

「どう改革すべきかは、社員が知っていた」

 ゴーン社長は、改革する際に積極的に社員と交流し、意見を求めていた。新聞では単純化して、トップダウン型のリーダーシップと捉えられることが多かったようだが、実態としては、ボトムアップ型のリーダーシップだったのだ。

 ボトムアップ型のリーダーシップのよいところは、「私たちの意見を取り入れてくれた」という感動を覚え、一体感をもって改革に取り組んでくれる部下が多数現れることだ。

 また、別の反対意見を述べた部下に対してもじっくりと耳を傾け、さまざまな意見を聞いた上で「君たちの意見も踏まえて熟考した結果、今回はこの決断をすることになった。納得いかないかもしれないが、どうか協力してほしい」と言われると、今回は違う判断だったとしても、次の機会に自分達の意見が妥当であれば採用してくれるだろう、と感じるから、意見が違っても今回はリーダーの判断に従おうという気になる。

 人間は、自分も含めさまざまな意見に耳を傾け(傾聴)、じっくり考えた上で出された結論をもって、「今回は君の意見と違うかもしれないが、協力してほしい」と言われるならば、積極的に従えるものだ。きっとこの人は、自分たちを見てくれている、耳を傾けようとしてくれていると信じられるからだ。