2個のブラックホールが近づき、衝突・合体する前のイメージ画像。(Courtesy Caltech/MIT/LIGO Laboratory

LIGO(ライゴ)がまたやった!

 2017年6月1日、米国の重力波検出装置「LIGO(ライゴ)」チームが3例目の重力波受信を発表しました。

 約22億年前に、私たちの太陽の質量の30倍のブラックホールと20倍のブラックホールが衝突・合体し、その際に放射された重力波が22億年間にわたって宇宙を泳ぎ渡り、2017年1月4日10時11分58.6秒(協定世界時)に地球に到達し、巨大で鋭敏なLIGOをわずかに揺るがしたのです。

 LIGOが過去に検出した重力波は、いずれも十数億年前のブラックホール衝突によるものなので、今回は最も昔、かつ最も遠方の衝突事件を捉えたことになります。合体によって出来上がった太陽質量の50倍のブラックホールは、(もしその場に残ったなら)現在は約24億光年ほどの距離にあります。途方もない数値が立て続けに出てきて、何だか目まいがします。

 2015年に最初の重力波を検出して世界の研究者を狂喜乱舞させて以来、LIGOはもうすっかり重力波望遠鏡として安定した活躍をしています。重力波検出も3例目になったところで、重力波天文学という新しい学問分野の成果を改めて紹介しましょう。

重力波って何だっけ

 アルバート・アインシュタインの相対性理論によると、私たちの住むこの空間と時間、合わせて「時空」は、伸びたり縮んだりしわが寄ったりするものだといいます。そして、そのしわの寄った時空を物体が通過する際には、真っ直ぐ進めずにぐにゃりと軌道がゆがみ、それが重力の影響を受けた物体の運動だというのです。

 何を言っているんだか分からないほど常識外れで奇妙なこの理論は、しかし水星の軌道のずれや、重力場で曲がる光線、宇宙の膨張などを次々に言い当てました。現在では、相対性理論は最も精密な物理学理論のひとつと見做されています。