(英エコノミスト誌 2017年6月3日号)

トランプ大統領、ドイツを改めて批判 欧米の亀裂深まる

伊シチリア島で開かれた先進7か国(G7)首脳会議(サミット)に出席するドナルド・トランプ米大統領(右)とアンゲラ・メルケル独首相(2017年5月26日撮影)。(c)AFP/PHILIPPE WOJAZER〔AFPBB News

ドイツと米国が非難の応酬を繰り広げた週は、挑発に乗ることのコストを浮き彫りにした。

 それは地方都市での、和気あいあいとした政治集会での出来事だった。とある日曜日の午後、ミュンヘンのお祭りの会場に設けられた蒸し暑いテントの中に、ブラスバンドの生演奏に迎えられてアンゲラ・メルケル首相が入ってきた。ビールを飲んでほろ酔い加減の聴衆をかき分けて進み、演壇に立った。

 これだけならどうということはない。しかし、メルケル氏が5月28日にこの集会で行ったスピーチの内容は世界中に報じられた。

 米国と英国が念頭にあることをほのめかしながら、首相はこう語ったのだ。「ここ数日間に私が経験したように、ほかの国々を全面的に頼ることができる時代は、ある程度終わった」。長い長い拍手と声援を受け、さらにこう続けた。「我々ヨーロッパ人は本当の意味で、自分の運命を自分の手に取り戻さなければならない」

 この発言は、北大西洋条約機構(NATO)と主要7カ国(G7)の首脳会議でドナルド・トランプ米大統領が欧州側の感情を害した後に出たものだ。トランプ大統領は、大半の欧州大陸諸国の国防費がNATOで目標とされる国内総生産(GDP)比2%相当額に達していないと各国首脳を批判したうえに、相互防衛について定めたNATO条約第5条に言及する慣例をあからさまに無視した。

 また、ある会合ではドイツのことを「ひどい、とてもひどい」と形容し、ドイツから米国に輸出される自動車に関税をかけてやろうかと言ったと伝えられている。メルケル氏はスピーチで自分の鬱憤を晴らしていたわけだが、これは危険な行動だ。

 メルケル首相は感情を衝動的に表に出すタイプではない。今回の発言はあらかじめ計画されたもので、ドイツの有権者に向けられていた。9月24日の総選挙を前に、メルケル氏の率いるキリスト教民主同盟(CDU)は支持率でほかの政党に2ケタの差をつけ、先頭を走っている。しかし同氏は、2002年と2005年の選挙でドイツ社会民主党(SPD)のゲアハルト・シュレーダー首相(当時)がジョージ・W・ブッシュ氏の戦争に反対することによってCDUの支持者を奪っていったことを忘れていない。