目利き機能があると、その商品の「売りたい人」と「買いたい人」の結節点になるのだ。

 オランダはこうしたことが元々得意であるらしい。

 オランダはヨーロッパ最大の花の輸出国として知られるが、同様に最大の花の輸入国でもある。アフリカのケニアは花の生産国として急成長しているが、そのうちの68%はオランダに輸出している。世界最大の花市場、アールスメールに集まった後、ヨーロッパ中に花が輸出されるのだ。

 これもオランダに花の目利き機能が集約しているからに他ならない。

 ケニアは、フランスやイタリアなどの国に直接花を送るよりも、オランダの市場に送った方が確実に顧客を見つけることができ、高く買ってくれるお客さんを見つけることができる。そして、ヨーロッパの花を扱う業者は、オランダの市場に行けばお客さんが喜んでくれそうな花を必ず見つけることができる。

 花の目利きがオランダで行われるような仕組みを、巧みに形成しているのだ。

 実は日本にもそうした「目利き」機能を持っている市場がある。下関のフグだ。

 愛知にはフグの名産地があるのだが、地元で水揚げせずに大半が下関に売りに行くという。理由を聞くと「高く売れるから」。下関は歴史的にフグを目利きする卸業者が発達しているようだ。

 日本中のフグ料理を出す料理人は、下関で目利きされたフグを入手すれば、値段に見合う品質のフグを手に入れられる安心感がある。地元で獲れたフグなら安いかもしれないが、品質は十分か、輸送に気を配ってくれているか、心許ない。下関なら、フグを品質に応じて値決めする目利き機能もあるし、フグに適した輸送手段も備えている。

 売る側も買う側も、双方にメリットのある市場となっているから、自然とフグが集まるのだ。