トランプ政権の対ロ疑惑、司法省が特別検察官を任命 元FBI長官

特別検察官に任命されたロバート・モラー元米連邦捜査局(FBI)長官〔AFPBB News

セッションズ司法長官は「疑惑」で蚊帳の外

 米司法省が、「特別検察官」*1(Special counsel)にロバート・モラー元連邦捜査局(FBI)長官(72)を任命した。FBI長官を12年間務めた史上まれに見る人物で、米司法界の「中興の祖」と言われている。

 任務は、先の大統領選でドナルド・トランプ陣営とロシア政府が共謀してヒラリー・クリントン民主党大統領候補に不利になるような介在をした事実があったかなかったかを捜査し、犯人が出てくれば逮捕することだ。

*1=「特別検察官」(Special counsel)は、司法省令によって同省が任命する特別職。ウォーターゲート事件の際に議会により設置された「独立検察官」(Independent prosecutor)とは異なり、あくまでも司法長官の管轄下に置かれている。「特別検察官」制度は1999年に議会決定により廃止されている。

 モラー氏に与えられた任務と権限は以下のような司法副長官(長官代行)の公式書簡に明記されている(参考=PDF文書)。

 司法省決定は、ロッド・ローゼンスタイン司法長官代行(司法副長官=52)名で出された(同副長官は1月13日にトランプ大統領に指名され、4月26日に就任したばかりのベテラン検事)。

 ジェフ・セッションズ(前上院議員=70)というれっきとした司法長官がいるのになぜ、長官代行なのかと言えば、セッションズ氏自身、「ロシア・コネクション」に関わり合いを持っていたのではないかという疑惑が浮上しているためだ。

FBI長官を解任した大統領に対する「検察の一揆」

 トランプ大統領は、自分で指名した司法副長官に検察組織を総動員して自らの疑惑を解明するために動かれてしまった。

 むろん、上下両院議員の中には「特別検察官」再設置を求める声もあったが、「今回の決定は司法省が自らの伝統と面子をかけて決めたもの。国家の制度を無視する『ド素人大統領』に検察官僚たちが怒り心頭に発した現れだ」(元司法省高官の1人)と見た方が妥当だろう。

 とにかくこの大統領、至る所で敵を作っている。メディアに対しては「宣戦布告」。情報機関をはじめ国務、国防両省の生え抜き官僚たちはそっぽを向いてしまった。

 何しろ、「大統領には国家機密を他の国に漏洩する権限すらある」(法的にはそうかもしれないが)と嘯く「外交オンチ大統領」に外交官や軍事関係者は開いた口が塞がらない。