AIやロボティクスに熱い視線が集まっている。日々ニュースで取り上げられ、セミナーには沢山の人が集まる。10年以内に今の職業の半分が機械に置き換えられるという予測もある。しかし、そこには誤解や過剰な期待も多い。こうした新しい技術とどう向き合えば良いのか。現実に起きている変化からその本質を読み解く。
 

万能なAIが存在するわけではない

 今、AIやロボティクスが注目される背景にあるのは、ICTの進化だ。これまで理論上では可能でも非現実的だと思われていたことが、テクノロジーの進化によって一気に現実味を帯びて来た。金融業でも製造業でもサービス業でも、あらゆる業界で大きな変革をもたらす可能性が指摘されている。

 しかし、実際には、AIやロボティクスを活用しようと検討を始めたところで、ハタと立ち往生してしまうことは多い。「どこから手をつけるのか」「何に活用するのか」「どんな成果が得られるのか」などが見えていないからだろう。このハードルを乗り越えるには、AIやロボティクスがもたらす変化をきちんと理解しなければならない。

 大手コンサルティングファームのアクセンチュアで、企業におけるAIやロボティクスの活用を支援する保科学世氏は「AIやロボティクスに代表されるインテリジェント・オートメーションは、いきなり人間の代わりになるものではありません。活用レベルは段階的に進化していくと捉えるべきです」と指摘する。

アクセンチュア株式会社
デジタルコンサルティング本部 
アクセンチュア・デジタル・ハブ統括
マネジング・ディレクター 博士(理学) 保科 学世 氏

 

 多くの人が誤解をしているのが、このポイントだ。一足飛びに全てに適用できるAIが登場するわけではない。同社ではインテリジェント・オートメーションの進化を4つのフェーズに分けて捉えている。

 最初はエクセルシートのマクロなどに代表される「単純な作業の自動化」、次にメールの受信内容をERPシステムに自動登録するなどの「一連の業務プロセスの自動化」、そして需要予測に基づいた自動発注など、アナリティクス技術を用いた「高度なデータ解析を伴う業務の自動化」。この先にあるのが、AIが対人コミュニケーションまで代替するような、「人間の認知機能をも代替する高度な自動化」である。 


 「今はルールに基づいて業務プロセスを自動化する、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)の導入が多くの企業で進められています」と保科氏は説く。必ずしも4番目に挙げている人間の認知機能を代替する高度な自動化の導入にいきなり取り組めば良いということではなく、大量の事務作業が問題になっているのならRPAを導入、データの力を用いて売上を上げたいならアナリティクスのアルゴリズムを活用するなど、その目的に応じて適切な活用方法を見極めることが何より重要という。
 

 

AIの活用が日本の労働力不足を補う 

  万能なAIでなくても、ビジネスの現場には大きな成果がもたらされる。定型業務の自動化は事務作業の効率を大幅に向上させてきたし、業務プロセスの自動化によって、大量の事務作業が自動化され、同時に作業時間は短縮、ミスも激減した。従業員はルーチン業務から解放され、働き方変革にも大きく貢献している。

 さらに、アナリティクス技術によって高度な業務を自動処理するサービスも既に提供されている。同社が店頭・物流拠点などの在庫・補充最適化のために提供している「アクセンチュア・フルフィルメント・サービス」がまさにそれだ。高精度な需要予測に基づいて自動発注を行い、店頭での欠品や販売機会の損失を防ぐことができる。導入した企業の欠品率が11%から2%に改善されたケースもあるという。

 こうしたインテリジェント・オートメーションのメリットがもっとも大きい国は、実は日本だという見方もある。同社の調査結果では、従来予想の経済成長を示す「ベースラインシナリオ」で、2035年までの日本の経済成長率(GVA)は0.8%。先進国の中で最低水準だ。しかし、AIの影響力が市場に浸透した場合に期待される経済成長を示す「AIシナリオ」だと約3倍の2.7%になる。保科氏は「日本はそれだけAIによる伸びしろが大きい」と話す。

 

  少子高齢化が進む日本では、労働力不足が喫緊の課題になっている。一方で長時間労働の問題もあり、このままでは経済力の低下は免れない。しかし、ロボティクスで業務プロセスを自動化したり、業務の判断をアナリティクス技術で自動化したりするなど、AIを活用することで、飛躍的に生産性を高めることができる。

 高度な業務のノウハウがありながらも、絶対的な労働力が不足する日本だからこそ、こうしたインテリジェント・オートメーションの活用が大きな成果に結びつくと考えられているのである。

 

3年で案件数は、約100倍に増えた

 インテリジェント・オートメーション導入への機運は急速に高まりつつある。実際にアクセンチュアが支援する導入案件数は、2013年から2016年のわずか3年間で約100倍にもなっている。

 同社はコンサルティングファームであり、AIを開発するITベンダーではない。だからこそ、特定のプロダクトに縛られることなく、中立的な立場で世の中の最新テクノロジーを組み合わせ、顧客のニーズに応じた適切な形で提供できる。技術の進化が早い分野だけに、プロダクトフリーのメリットは大きい。

 「現時点で、AIエンジンに万能なものはなく、それぞれの特徴を捉えて良い技術を組み合わせて活用することが肝要です。アクセンチュアはグローバルで約200社のAI関連技術を常にウォッチしており、それらを応用して最適な組み合わせを提案しています。複数のAIエンジンから最適なエンジンを選択的に組み合わせ、人間のオペレーターとの協調も可能な、AI HUBプラットフォームも提供しています。先進技術への理解と、それを実装して提供できる実行力が、弊社の強みです」(保科氏)。

 もう一つの強みが同社のビジネスとITに対するインテグレーション力だ。「AIは適材適所で活用することで効果が上がります。人間がオペレーションすべき領域、個々のAI技術が得意とする領域、双方を理解した上で組み合わせることが重要です」と保科氏は語る。そこでは企業が既に保持するデータの取り込みなど、既存のシステムとの連携も当然必要になる。

 「AIをどう活用するかが、今後企業の差別化につながると考えています。私たちは幅広いビジネスへの知見と大規模なシステム構築の実行力を集約し、AIの活用に向けた戦略から既存のシステムとのインテグレーションまで、総合的なパートナーとしてお客様を支援していきます」と保科氏。

 

AIは新しいユーザーインターフェース

 現在、一連プロセスの自動化や分析アルゴリズムをも包含した自動化が導入の主流ではあるが、対話型のAIのニーズも増えてきており、実用化しつつある。同社が手がける仮想エージェントによるコールセンター業務の支援はその先駆けと言える取り組みである。医師の診断や弁護士の相談といった専門性の高い業務も、今後仮想エージェントが活用されていくであろう。

 その際に、人間の存在意義はどこにあるのか。ここで押さえておきたいのが、機械はあくまでも道具であり、人間が幸せになるために創り出したものであるということだ。「技術の進歩に伴い、これまで人間が実施していた様々な判断と行動が機械によって置き換わりつつあります。しかし、基本となるルールを決めるのは人間であるべきです。何をAIに任せ、何を人間が実施すべきなのか、日々考えています」と保科氏は語る。

 確かにどんなに技術が進化しても、人間に受け入れてもらえなければ意味はない。そのために必要とされるのが共感力だ。病気の診断を告知する際にも、目の前に居る患者の心の動きを汲み取って伝えることが求められる。そこは人間が担うという発想があって当然だ。「もっとも効果があるのが人間とAIの協調です。IQの高い人間が必ずしもコミュニケーション能力が高い訳ではないように、賢いAIエンジンさえあれば良いというわけではありません」と保科氏は指摘する。

 人間が共感できるAIをどう実現するのか。保科氏は「大事なのはAIが人間とコンピュータの新しいユーザーインターフェースだと考えること」だと提唱する。今後、AIが人間とコンピュータのインターフェースになり、人に常に寄り添い、企業活動の顔としての役割も持つようになる。

 「ユーザーインターフェースとして重要なのが、デザインです。私が統括しているアクセンチュア・デジタル・ハブでは、右脳ルームと左脳ルームを設け、顧客体験を追求するデザイナーが、AIのアルゴリズム構築を行うデータサイエンティストと一緒に働く環境を作ってプロジェクトを進めています」と保科氏。

 AIは人間から仕事を奪うものではなく、人間と協調することで、企業の競争力を高めるものだ。だからこそデザインとアルゴリズムを融合し、いかに人(顧客および従業員)に寄り添うサービスを提供していくかが企業におけるAI活用の成功の鍵となるだろう。

 

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