(英エコノミスト誌 2017年5月13日号)

電撃解任の米FBI長官「私は大丈夫」 職員宛て書簡で

米連邦捜査局(FBI)に関する上院司法委員会の公聴会でFBI長官として証言するジェームズ・コミー氏(2017年5月3日撮影)。(c)AFP/Getty Images/Eric Thayer〔AFPBB News

トランプ大統領は単に無能だったのか、それとも悪意があったのか。

 ジェームズ・コミー米連邦捜査局(FBI)長官がドナルド・トランプ大統領によって解任されたことを知ったのは、たまたまロサンゼルスでとある行事に参加していたときだった。会場にあったテレビにニュースが流れたのを見て、冗談だと思ったという。

 あの宣告は、第45代大統領について研究する後世の歴史家たちに自信を持って伝えていけるものだ。これはトランプ政権についての重要でクレージーな難問の存在を浮かび上がらせる判断であり、その答えは米国の未来を決める可能性がある。あるいは、これで命運が決まるのはそれよりずっと些細なものかもしれない。

 果たして、トランプ政権はめちゃくちゃで、輝かしい伝統を誇る米国の歴代政権に列する価値はないが、腐敗しているというよりは茶番であり、リアリティー番組のスターが政府のようなものを無謀にも運営しているだけなのか。それとも、自分の仲間、場合によっては自分自身も対象となる正式な捜査を指揮する人物の解任というリチャード・ニクソン以来の行動に出たトランプ氏は、米国の民主主義を脅かす存在なのだろうか。

 当然ながら、民主党は最悪のパターンである後者ではないかと疑っている。実際、民主党はコミー氏が解任される前から、同氏が捜査している件について特別調査を始めるよう連邦議会の共和党指導者に求めていた。ロシアが昨年の米大統領選挙に介入してトランプ氏に肩入れしたのではないかという疑惑について、捜査が政治家の介入を受けるのを防ぐために議会でも調べようというわけだ。

 また、後に明らかになったように、コミー氏は、トランプ氏のアドバイザーをかつて務めたロジャー・ストーン氏(自分の主張をしつこく語るリバータリアン)とポール・マナフォート氏(トランプ氏の選対本部長を途中まで務めていた人物)の2人がロシアに奇妙なほど近いことを突き止めていた。さらに、コミー氏はこの捜査に投じる人員や予算の追加を要求していたとも言われている。