転職市場が活況を呈し、転職者数は2008年のリーマンショック以前の水準に回復しつつある。その中で注目すべきは、40~50代のミドル層の採用ニーズが高まっていることだ。背景に何があるのか。業界をよく知る専門家に取材した。

40歳以上のミドル層やスペシャリストの採用ニーズ増加のワケ

 転職市場ではこれまで、「転職の35歳限界説」「40~50代になると非正規雇用しかない」などと言われ、年齢を重ねれば重ねるほど不利とされてきた。それが今、大きく変化している。いったい何が起きているのだろうか。

 「40歳以上のミドル層を採用したいという企業のご相談が増えています。そのほとんどが、管理職や専門職として自社に迎え入れたいというニーズです。転職によって職位が上がり、年収も上がったというケースも少なくありません」と話すのは、大手人材紹介会社、ジェイ エイ シー リクルートメント 執行役員 事業本部長の山田広記氏だ。

ジェイ エイ シー リクルートメント
執行役員 事業本部長 山田広記 氏


 同社は、日系企業・外資系企業の双方に対する人材紹介で約30年の実績があり、転職市場を俯瞰している大手の人材紹介会社だ。特にミドル層、エグゼクティブ層、グローバル人材、スペシャリストなどの紹介に強みを持つ。そんな同社ゆえに、ミドル層の異変にはひときわ敏感に反応し、動きに注目しているという。理由について山田氏はこう説明する。

  「ビジネスの多様化が大きな要因の一つです。国内市場が成熟する中で、企業が勝ち抜いていくためには企業価値向上につながる新たな事業を積極的に切り開いていく必要があります。電機メーカーがEC(電子商取引)や金融に参入するといったように、今では異業種や新事業の参入も珍しくありません。また企業の海外進出やM&A(合併・買収)も盛んです。こうした状況下で、スピード感をもって成果を出すためには人材が鍵になります。ただ、生え抜きの人材を育成するのでは時間がかかり、状況の変化に機敏に対応することはできません。そこで、知識や経験の豊富なミドル層やスペシャリストを採用し、短期間で事業を立ち上げ成果を出そうとするケースが増えているのです」

 コメントから、我先に次なる市場の覇権を握りたい企業の思惑や、そこからくるミドル人材への熱い視線を感じ取ることができる。
 

ミドル・専門職人材は、社内の「かくれミスマッチ」に悩んでいる?

 ただ、日本企業のグローバル化や多角化は、今に始まったものではない。では、以前からミドル層を求める声が企業にあったのだろうか。

 山田氏は「ミドル層やスペシャリストの採用ニーズは潜在的にはありました。ただ、多くの企業で『責任ある重要な仕事は生え抜きの人材でなければ不安』といった意識が強かったのです。そのため、例えば海外の工場の立ち上げに携わる人はずっと同じ人で、タイの次はインドネシア、その次はベトナムといったように転々としていました。

 最近になって、前述したように環境変化のスピードが速くなり、既存の人材だけでは追いつかなくなったのです。また、徐々にミドル層やスペシャリストの採用が成果につながることが認識されてきたことも大きいと見ています」と話す。

 ジェイ エイ シー リクルートメントが示したいくつかの事例がある。そこからは、40~50代のミドル層のポジティブな転職が活発に行われている様子がはっきりと見えてくる。ある例では、定年退職を目前に出向中である大手電機メーカーの子会社から、中堅自動車部品メーカーの事業所長に転職している。また、ある40代後半の人材の例では、大手化学メーカーの海外事業に従事していた方が事業の再編に伴い、中堅機械メーカーの海外法人責任者として転職した。このほか、日系電機メーカーの営業部長から、海外のEC企業のマネージャーに招かれた50代の人もいる。

 昨今は働き方に対する意識の多様化により、昇進で職位が上がっても、それが必ずしも本人の望む環境でなかったり、管理職になることで自らの専門性や能力が生かせなくなるなど、ミドル人材の昇進や異動によって訪れる、言ってみれば社内の「かくれミスマッチ」が起きている。こうした状況を打破するために、自らの能力を最大限に生かせる転職を決意する例もあると山田氏はいう。
 

ミドル転職成功のキーワードは「専門性」

 キャリア豊富な人材が、転職に成功するにはどのような条件があるのだろうか。

 山田氏は「キーワードの一つが『専門性』(マネジメント経験なども含む)です。
『これだけは今の会社で誰にも負けない』といった知識や経験を持っている人は強いですね」と多くの事例を見てきた知見を語った。

 40~50代の転職成功事例というと、M&Aなどに伴い、マネジメント層が経営者候補として求められる、といったイメージを持つかもしれないが、山田氏によればマネジメント層以外にもさまざまな採用ニーズがあるという。

 「例えば入社以来、設計や開発などに携わってきた人で、その後品質管理まで担当するようになった人は、スペシャリストとして活躍の場が多くあります。また、海外での工場の立ち上げの経験があるような人材も引き合いが増えています。ビジネスに使える英語力を持っていればなおいいですね。英語など語学が堪能というだけで、一つの専門スキルです。もちろん技術系だけでなく、管理部門の経験も十分専門性として認識できます」

 最近のトレンドはあるのだろうか。「旬のニーズとしては人工知能(AI)、ロボット、自動運転などの分野でニーズが高まっています。これらの技術そのものに携わったことのある人はもちろんのこと、関連技術、周辺業界の経験や知識も求められています。さらに、前述したように異業種参入も珍しくないことから、従来ではなかったような、業界の枠を超えた転職事例も増えています」また、当然トレンドではない分野も常にミドル層のニーズはあるという。
 

ミドルが持つバリューをコンサルタントが見抜く

 40~50代の人材を採用し成功している事例が増えていることから、企業の意識も変わりつつある。
「たとえば大手企業ではこれまで、採用は人事部まかせでしたが、ミドル層やスペシャリストの採用には担当部門の部長や役員など、より上位層の方が関わるようになってきています。また、地方企業では、創業者が事業承継の課題を抱え、2代目、3代目の経営者と一緒になって会社を成長させてくれる人材に関するご相談が増えています」。

 将来の事業戦略を担うリソースとして、これらの人材に大きな期待がかかっていることがうかがえる。

 人材と企業との最適なマッチングを行うためには、その企業の業務に対する正確な理解が欠かせない。先進の技術知識や業界動向の把握も必要だ。同社ではそのために、金融とITを融合したフィンテックやIoT(もののインターネット)などについて専門のチームを設け、担当業界を横断した情報共有を行っているという。また、元エンジニアや各種業界出身者をコンサルタントとして迎えている。

 「最先端の技術情報を個々の転職コンサルタントがキャッチできる専門性、アンテナの高さがミドルエグゼクティブ層を専門に扱う我々の一番の強みになっています」と山田氏は語る。「求職者の方が当社のコンサルタントと面談を受ける際は、これまでの経験にぜひ誇りを持ってアピールしていただきたいと思っています。ご自身が思っていなかったような活躍の場が見つかる可能性があります」

 山田氏がそう話すように、自分にはもう転職のチャンスはないと考えている人が、実はある企業にとってはビジネスチャンスにつながるスキルを持っていると映るケースは多いという。ジェイ エイ シー リクルートメントは、経験豊富な転職コンサルタントがサービス利用者一人ひとりのこれまでの経験や今後の希望を丁寧に聞き、そこから本人も認識していないようなバリューを見抜き、キャリアを生かす的確な助言をしてくれるという。

 たとえ転職の意思がまったくなくとも、自覚していない隠された伸び代に気づくことや、経験やスキルをフルに生かせる場が存在することを発見することは、決して損にはならないだろう。

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